年末となりました。コロナ禍で飲食店の皆さまは、いま大変かもしれません。しかし、負けないでくさい。飲食店ビジネスには大きな未来と希望があります。明るい2020年をお迎えください。

●飲食店ビジネスはまだ小さい。これから必ず成長するビジネス

 飲食店ビジネスはコロナ禍で大変です。コロナ後も大変かもしれません。しかし、ここでくじける必要はありません。これから間違いなく成長するからです。
   
 ほかのビジネスと比べてみましょう。製造業のトヨタの売上高は約30兆円です。商社の三菱商事は約15兆円、情報産業のNTTは12兆円となっています。
  
 日本の外食産業で最大の売上高企業は、牛丼チェーン「すき家」などのゼンショー。売上高は約6,300億円です。「ガスト」などのすかいらーくが約3,700億円、そして日本マクドナルドが約2,800億円です。トヨタの50分の1です。飲食店ビジネスは、まだまだ小さな規模です。
  
 飲食店ビジネスは歴史もまだ浅く、大きなビジネスになる準備ができていません。しかし、時間をかけて新しい試み、革新的なアイデアの試行を重ねることで大きくなるはずです。
  
※ここでの飲食店ビジネスとは外食産業のことです。外食産業は大きな企業だけのイメージが強いのでここでは「飲食店ビジネス」を主に使います。

●クルマビジネスは産業革命以来、革新を続ける歴史

 日本の大企業と言えばトヨタ。世界でナンバーワンの自動車製造業です。製造業は18世紀後半の産業革命、20世紀末からのネットワークやデジタルなどの情報革命、最近では人口知能の活用などで大きなビジネスへと進化しました。
   
 クルマは1769年の蒸気自動車の発明からスタートしました。その後ガソリンエンジンの発明、フォードの大量生産方式など技術革新を続けました。また、経済成長とともに人びとの「クルマがほしい」という声が広がり、それに応えることで成長を続けました。
   
 革新は技術だけではありません。なによりも大きな成長の要因は、魅力的なクルマの提供だったと思います。性能、デザインなど毎年新しいクルマを発表して販売してきました。

●古くからある飲食店ビジネス。しかしビジネスの歴史は浅い

 トヨタの創業は1918年(大正7年)の自動織機製造からはじまっています。「すき家」のゼンショーは1982年(昭和57年)の創業。企業としての歴史は、はじまったばかりです。
    
 日本の産業では、竹中工務店(1610年・慶長15年創業)、三越(1673年・延宝元年創業)、武田薬品工業(1781年・天明元年創業)など多くの企業が長い歴史のなかで成長しています。
    
 飲食店は、歴史的には古い仕事であるものの、企業として組織化されないまま近代にまで至っています。京都では1,000年を超える歴史をもつお餅屋さんがあるそうです。しかし、大きな企業にはなっていません。東京では竹橋に「タカサゴ」という飲食店があります。創業は1650年(慶安3年)。しかし、現在でも1店舗で、いまはカツカレーなどの洋食がメインのお店です。
    
 飲食店ビジネスは歴史があっても大きくなるための準備はしてきませんでした。

●大きな成長の要因はチェーン店ビジネス

 飲食店ビジネスは20世紀後半にフランチャイズチェーン店の仕組みができて成長しました。代表的なチェーン店はハンバーガーのマクドナルドですね。世界での売上高はざっと2兆円です。コーヒー・ショップのスターバックスはざっと3兆円です。ビッグビジネスです。
    
 日本でも1960年代以降にチェーン店が生まれました。「すかいらーく」「日本マクドナルド」「ミスタードーナツ」などがこのころスタートしました。
   
 ここで、知っているとためになる一口知識。世界初のコーヒーチェーン店、実は1930年代の日本で誕生しました。現在も営業している銀座の「カフェーパウリスタ」です。「銀ブラ」銀座でブラジルコーヒーの語源となったお店です。
   
 当時パウリスタは上海を含めて26店のチェーン店を運営していました。ボストン大学教授のメリー・ホワイトの『コーヒーと日本人文化誌』には「パウリスタは、世界初のコーヒーチェーン店として成功を収めていた」とあります。
  
 それはともかく、飲食店の本格的なビジネス化は50年ほど前にはじまったばかりです。飲食店ビジネスは21世紀のいまでも、まだ子どもの時代です。これからグングン成長して大きくなるはずです。
   
※「カフェーパウリスタ」については過去ブログに記事があります。

●飲食店ビジネスにも必要な新製品開発

 日本の外食市場の規模は、ざっと25兆円というのが相場です。しかし、ここ数年はコロナ禍で統計上は減少するのでしょう。しかし、家庭での消費も含めると安定市場です。人にとって食べることに大きな変化がないからです。
  
 それでも、成長するためには世界にビジネスを広げる必要があります。日本国内で一日3回食べている人に4回食べさせることはできないからです。したがって外食産業の大手の企業は、アメリカ、アジアなど世界への進出に一生懸命です。
  
 そこで、もう一度考えてみてください。大きくなるために製造業などがやってきたことをです。まずは技術革新でした。これは飲食店のチェーンビジネス化がひとつの答えでした。デリバリーやサブスクなどもやりました。しかし、大事なことはもうひとつのこと。市場の成長、つまりお客さまの要求に応えることです。
    
 それは新製品の提供です。クルマはそのために性能を進化させ、デザインを変え、SUVなどのタイプ開発など行うなど創意と工夫を重ねました。毎年、モデルチェンジをして、モーターショーを世界各地で開催し、販売店にお客さまを引き付けてきました。
   
 飲食店ビジネスではどうでしょうか。確かにタピオカドリンクやマリトッツォなど、そのときどきに新しいトレンドはありました。大盛にした、新しい味付けにしたという新メニューもありました。でも本格的に新製品に取り組んできたかどうかです。

●新製品はニッチから。ビッグビジネスになったハンバーガー、牛丼

 ハンバーガーの歴史はニッチからはじまっています。ドイツのニッチな郷土料理「Frikadella(フリカデラ)」-ひき肉料理からです。これが移民とともにアメリカに渡り、ハンバーグ・ステーキになりました。
   
 やがて、これを食べやすくしたハンバーグ・ステーキ・サンドイッチが1893年ごろに誕生。さらにそれが評判となって、はじめてのハンバーガー・チェーン店「ホワイト・キャッスル」が1921年に誕生しました。このチェーン店はいまでも健在です。
    
 その後、「マクドナルド」が誕生。やり手の経営者レイ・クロックによって巨大なビジネスとなりました。つまり、はじまりはドイツのニッチな郷土料理からということです。
    
 日本では回転ずし、ハンバーガーに続く大きな飲食店ビジネスとして牛丼があります。牛丼は日本橋の魚河岸にあった「吉野家」からスタートしました。現在は「すき家」が最大チェーン店ですが、牛丼ビジネスは「吉野家」からはじまっています。
    
 「吉野家」の牛丼は魚河岸で働くひとたちのための店でした。ニッチでした。そこから多くのお客さまの獲得を目指して24時間営業、多店舗展開、メニューの絞り込み、アメリカ・アジアへの出店などにより、大きなビジネスに成長しました。つまりニッチからスタートしたということです。
   
 巨大な飲食店ビジネスはニッチな新製品からスタートすることがあるということです。歴史が証明しています。ニッチな飲食店に注目すべきです。大きなビジネスに成長するニッチな飲食店があるはずです。
  
 私も「この店はもしかしたら…」と思う店があります。ニッチは市場が小さく大変なこともあります。しかし、成長の芽をもっています。ニッチであることは、とても大切なことです。
    
 ※「マクドナルド」「吉野家」については過去ブログに記事があります。

 

 なにか明るいイメージがないかと写真を探してアップしてみました。「う~ん、なんだかなぁ」と明るい希望と元気を失くした方がいたら……すいません。

参考文献
一般社団法人日本フードサービス業界ホームページ
メリー・ホワイト『コーヒーと日本人文化誌-世界最高のコーヒーが生まれる場所』創元社 2018年

飲食店ビジネスには明るい未来がある