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健康ニッチ飲食店の事例:できはじめたニッチな健康飲食店

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 ここでは8つのカテゴリーのうち健康ニッチ飲食店の事例についてレポートします。カテゴリーの区分けは別ページ参照してください。またこのカテゴリーの市場と顧客分析は予測概論を参照してください。

できはじめたニッチな健康飲食店

 まだ、数は少ないながら健康飲食店はできています。しかし野菜サラダのお店以外は大手の食品メーカーなどのアンテナショップなどがメインです。飲食店さんは、これから成長するであろう健康飲食店にはあまり興味がないのかもしれません。

1.生活習慣病を予防する飲食店「タニタ食堂」

 大手町のビジネスビルに、計測機器のタニタの「タニタ食堂」があります。社員の健康に配慮したメニューを提供するタニタの社員食堂。そのメニューが評判になり、社外に展開したお店です。

●500kcalのランチを20分かけて食べる

 お店の定食は原則500kcal前後。一般の飲食店の定食などは800~900kcalぐらいと言われていますからちょっと少なめです。ちなみに、マクドナルドのビックマックはひとつで525kcalです。
   
 塩分も控えめで野菜もたっぷり。早食いにならないように歯ごたえにも気配りしています。20分かけて食べるようにと、席にはタイマーまで用意されています。20分は、かなりゆっくり食べないと難しい時間です。まさしく生活習慣病予防の飲食店です。

●体脂肪の計測サービスでリピーター化

 このお店のすごいところは、これだけではありません。お店の入り口に小さなブースがあり、そこに管理栄養士さんがいてカウンセリングサービスを行っています。
  
 希望すれば、体脂肪、筋肉量などタニタ製の最高級の体脂肪計で計測してもらえます。計測結果を管理栄養士さんがていねいに説明。さらに、毎日の生活についての助言までしてくれます。(2022年現在はオンラインに変わっています)。
  
 タニタは計測器の会社なので体脂肪計の販売促進も兼ねているのだと思います。それだけでなく、マーケティングとして考えると食事の提供というコアサービスだけでなく、体脂肪計による生活アドバイスというサービスでお客さまに継続して来店してもらえます。
  
 リピートするお客さまをつくることは飲食店ビジネスで最も大切な施策です。

2.豊富な食物繊維、寒天の専門飲食店「かんてんぱぱカフェ」

 寒天メーカーの伊那食品工業のお店「かんてんぱぱカフェ」。東京・初台駅の近くにあります。お店は中高年の女性のお客さまでいっぱいです。

●寒天(かんてん)のランチメニュー

 売り物は寒天を使ったヘルシーなランチメニュー。タイ風の冷やし寒天麺など工夫されたオリジナルメニューがあります。もちろん女性を意識したあんみつ、ところてんなど寒天らしいデザートもたくさんあります。
   
 寒天の食物繊維の含有量は70%以上。一日に必要な食物繊維の量は、女性は約18g、男性は約21gと言われています。なかなかこの量を摂るのは大変です。寒天で食べることができればカバーできそうです。

●物販で客単価をアップさせる

 このお店の特徴はレストランだけではなく、自社商品などの売り場もあることです。ランチの平均単価は1,000円程度。しかし、帰りがけにここでたくさんのおみやげを買うお客さまがいます。これを含めると客単価はかなり高くなっているはずです。
   
 ターゲットは「お通じを気にするお客さま」。訴求する内容は整腸効果で明確。また、ここでしか購入できない食物繊維たっぷりの寒天製品がそろっています。お客さまは整腸効果のために、定期的にお店を利用するはずです。メーカーならではのビジネスモデルです。このお店の人気は続くと思います。

3.ちかごろ注目、野菜サラダの店「CRISP SALAD WORKS(クリスプ サラダ ワークス)」

 最近、サラダレストランが増えてきています。なかでもアメリカ発祥のチョップドサラダの専門店が目だっています。「クリスプ サラダ ワークス」。ボウルいっぱいのサラダランチを提供しています。

●おなかがいっぱいになる「サラダボウル」

 すでに東京を中心に約20店舗ほどが展開しています。カウンターのパネルで注文、キャッシュレス、ネット予約などお店のスタッフは接客せずに調理に専念できます。店内もすっきりしていて好感がもてます。

 しかし、野菜の健康に関する情報はあまりありません。「いわゆる健康食品」の場合は、もっと強引なセールスメッセージでぐいぐい迫ってきます。

 野菜の健康的なイメージだけでなく、野菜の機能性の主張があってもいい気がします。行き過ぎた効能の表現は許されませんが、それぞれの野菜がもつ特徴や栄養素について、ていねいに知らせることがあってもいいと思います。

●なぜ野菜350g食べる必要があるのか

 ところで、前述の厚生労働省が推奨する野菜を毎日350g摂取すること。この350gの理由をご存じですか。ほとんどの方は知らないと思います。
   
 かくいう私も、東京大学教授で公共健康医学が専門の佐々木敏の『佐々木敏のデータ栄養学のすすめ』を読むまで知りませんでした。というよりも「考えたこのともなかった」というのが正直なところです。

 「野菜を1日350g以上食べる」のは総死亡率が下がるからです。世界各国で長期的に調査された結果から、野菜を350g以上食べている人は、それ以下の人よりも死亡率が低くなるからです。ちなみに400g以上食べても死亡率に大きな変化はないようです。

 飲食店でも「野菜を食べれば健康的」というイメージだけではなく、確かな事実に基づいた健康情報を提供すべきだと思います。ここが重要で難しいところですが。

4.女性に人気、玄米のレストラン「ファンケル ブラウン ライス ミイルズ」

 ファンケルといえば無添加化粧品ですが、健康食品の販売もかなりのボリュームがあります。玄米を発芽させた「発芽米」などが有名です。銀座のお店には「ファンケル ブラウン ライス ミイルズ」というレストランもあります。

●健康食品メーカーの玄米レストラン

 レストランでの売り物は玄米イタリアンです。玄米粉からつくったパスタやブレッド、リゾットを提供しています。工夫されたレシピでレベルの高さを感じます。

ファンケルなので、やはりお客さまは女性が中心です。買い物のついでに玄米レストランで食事ということなのだと思います。店内はゆったりとしていて銀座らしい雰囲気です。飲食店らしい慌ただしさはありません。来店された大事なお客さまへの飲食のサービスというお店のようです。

●減少する米消費、健闘する玄米、雑穀類

 日本人ひとりあたりの米の消費量は、1962年度は約118kg。以降、ずっと減少し続けて2018年度には約53kgまでに減少しています*。そのなかで、玄米や麦、雑穀類は健闘しています。人気の要因は、これらには白米よりも食物繊維や栄養価が豊富にあることです。

 ファンケルが本格的に飲食店ビジネスに参入する気配は見えません。本業が忙しいでしょうから飲食店ビジネスにまでメリットを感じていないと思います。しかし、日本を代表する大きな企業です。もし、動き出したら外食産業の地図が変わるかもしれません。「健康飲食店」のビジネスに気がつかないでほしいと思います。

*農林水産省「年間1人当たりの米の消費量をおしえてください。」

<参考文献>
佐々木 敏『佐々木 敏のデータ栄養学のすすめ』女子栄養大学出版部 2018
一般社団法人高機能玄米協会・日本食糧新聞社『玄米食白書2019』2019

タニタ食堂・カンテンパパカフェ、クリスプ サラダ ワークス、ファンケル
タニタ食堂・カンテンパパカフェ、クリスプ サラダ ワークス、ファンケル

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