生物学では新種の発見が大きなテーマのようです。学者さんたちが血まなこで探しています。ただし新種かどうかの確認が難しいようです。DNAを調べるなど多くの手続きが必要ですね。
    
 新種は「進化」に関わります。私たち人間も400万年以上の前の猿人からはじまり、原人、旧人と進化し、20万年前に新人ホモ・サピエンスとなりました。新しい種は進化の証(あかし)でもあります。
   
 私も飲食店の新種を探しています。難しいですね。生物学と同様に新種かどうかの判断がつきません。DNAはありませんから。ただ新種と思える店が増えているかどうかはひとつの基準になります。継続して増えていくかどうかです。増えているのなら、環境に適応し自然選択によって生き残るという進化論の考え方にも適合しています。
   
 以下はこれまでの新種探しの成果についての簡単なレポートです。サイトに別途のレポートもあります。

●絶滅種。時代にあわなかった新種

<東京・台東区の「給食当番」(閉店)>
 昭和の給食メニューを再現して提供する飲食店でした。残念ながら閉店してしまいました。揚げパンがおいしかったですね。
   
 給食がはじまった当時、揚げパンの登場は衝撃的でした。それまでにないメニューだったからです。当時と比較すると、現在の給食メニューは私たちの食嗜好に大きな影響を与えるようなものを出していないのだと思います。給食というシステムが定着したのですから当然かもしれません。そのため給食を再現して提供する店への支持は広がらなかったのかもしれません。同じような店は出てきていません。進化しなかったということでしょうか。絶滅種です。

●新種の可能性。進化しているかもしれない

<東京・代々木上原の「ガテモタブン」>
 人気のレストランです。人口約77万人のヒマラヤ山脈にあるブータン王国。この国の専門料理店です。ターゲットは日本人。ブータンの人のためのレストランではありません。経営者の方も日本の方のようです。
    
 カラいことがブータン料理のひとつの特徴のようです。ここも人気になっているひとつの要因のようです。唐辛子のカプサイシンには薬効があります。もしかしたら新種として進化するかもしれません。
      
<東京・神宮前の「ワールド・ブレックファスト・オールデイ」>
 世界の朝食をテーマにしたレストランです。ここも人気店です。Webサイトには「2ヶ月ごとに国を変えて世界の朝ごはんをご紹介」とあります。
    
 その国の朝食を調べて研究して磨きあげて、洗練されたおいしいメニューとして提供しています。これが新種なのかはよくわかりません。しかし、これまでの飲食店とスタイルが違うことは確かです。

●推定新種。時代に適応して進化

<東京・谷中の「ひみつ堂」>
 年間を通してかき氷専門店として営業しています。これまでには考えられないことでした。年間営業ということでは藤沢・鵠沼海岸の「埜庵 (のあん)」というお店が先だったと思います。「ひみつ堂」はさらに進化しています。
   
 特徴は旬のフルーツなどの高品質の食材をたっぷりと使ったメニュー。一杯1,800円は普通という高単価の価格戦略です。さらに新作メニューを毎月これでもかというほど出し続けています。こうなると「一度食べてみたい」、「いま行かないと食べられない」という気持ちになります。
    
 店の前はいつも長蛇の列です。最近では「ひみつ堂」にならって、かき氷専門の店も増えてきています。進化だと思います。

<東京・日本橋馬喰町の「アントシカダ(ANTCICADA)」>
 昆虫食レストランです。SDGs。将来のタンパク質不足が予測されています。そこで昆虫食という新カテゴリー。料理のセンスが素晴らしい店です。新種です。進化を感じます。これから先どう変化し、どう成長していくのか楽しみです。

 ということで新種の飲食店を探しています。「これは」と思われた方、お気軽にご一報ください。よろしくお願いします。
     
 ところで私自身はホモ・サピエンスまで進化してないかもしれません。床に落ちたピーナッツをそのまま食べたところ、妻が「人間ではない」と言ってましたから。「早く人間になりたい!」

給食当番・ガテモタブン・ワールドブレックファストオールデイ・ひみつ堂・アントシカダ
給食当番・ガテモタブン・ワールドブレックファストオールデイ・ひみつ堂・アントシカダ

<参考文献>
川上徹也、石附浩太郎『なぜ、真冬のかき氷屋に行列ができるのか?』日本実業出版社 2013
森西浩二『ひみつ堂のヒミツ 1000円のかき氷を1日500杯売り続けられる理由』 DU BOOKS 2017