1.「トーゴ共和国」を地球儀で指させない

 いやいやなかなか。地理好きな方は別として難しいですね。西アフリカ中央部のギニア湾沿岸の小さな国。隣国ガーナはロッテのチョコレートの名前で有名です。人口730万人。九州よりは大きいが北海道より小さな国。リン鉱石、コーヒー、カカオが主要な産品とのこと。

 本日は、その国からやってきたウルトラニッチ、日本唯一のトーゴ料理店、赤坂の「エコ ロロニョン」でランチです。

トーゴ共和国、ニッチな飲食店
どこといわれても、すぐにはわからない国

2.小さな恐怖心と子供のような好奇心で

 トーゴ料理と言われてもなかなか料理のイメージが出てきませんね。湧き上がる妄想では…聞いたこともない動物のお肉のステーキとかカタカナの名前の野菜のスープが出てくる…、お店の人もお客さんもアフリカの人ばかり…。お店に入ったら一斉に視線が私に…。

 そんなことないでしょうとは思いながら入店。しかし後から考えてみると、ここが重要ポイントだと思います。詳しくは最終章で。このお店、想像以上に満足できる美味しい料理のお店でした。

赤坂のにぎやかな街にあるお店

3.今回は3Cではなく、SWOTで分析してみましょう

(1)お店の強み(Strengths)
①一番は当然ながら「日本唯一」。とてもとても珍しいトーゴ料理店には競合がありません。しかも他の店がカンタンに真似できません。ニッチビジネスならではの最重要ポイントです。
②立地が良い。
赤坂2丁目。TBS、日枝神社、米国大使館などに挟まれた地域です。昼は知的なビジネスマンと磨き上げられたセンスの女性たちであふれています。夜は賑やかな飲食街。いつでも人通りが絶えません。
③顧客の絞り込み。
入店するとすぐわかりますが、15人中、女性客10人で約7割。おじゃま虫の私と同僚がいなければ8割弱が女性です。一般にエスニック料理店は女性客の支持で成り立つといわれていますが、このお店もしっかりと女性客をつかんでいます。
④欧風料理。
期待に反してといっては失礼ですが料理が洗練されています。旧宗主国がフランスということもありヨーロッパの雰囲気のあるメニューの数々。盛り付けも美しい。そこにアフリカらしさがさらに加わり、食べたら「友達に話したくなる」というバズの要素があります。
 マーケティングを志すなら、あと96個ぐらい強みを見つけないといけないのですが…、紙面の都合ということで(^_^)。

(2)お店の弱み(Weaknesses)
①店の完成度。
スペース、内装、顧客サービスなど規模の小さな店なので、店舗としての弱みは数えあげたらキリがないでしょう。
②知名度。
小さな店でトーゴ自体を知らない人も多く、店の知名度は低いと言えます。しかし、一般的なお店と比べると唯一のトーゴ料理店として認知されているので、むしろ「強み」という考え方もできますね。
③ヒト・モノ・カネ・情報。
①、②もそうですが、ニッチビジネスの場合は、弱みについてあまり気にする必要はないと思います。気にしていてはキリがありません。開き直ったほうがいいと思います(^_^)。弱みを克服する余裕があるのならば、むしろ強みを強化するべきです。お客さまは弱みのカバーよりもその店に「らしさ」を望んでいるからです。

(3)機会 (Opportunities)
①見込顧客の増加。
国連世界観光機関のとてもザックリした資料ですが、海外旅行者は長期で考えると今後も増加するはずですし、アフリカ、トーゴへの渡航者、訪日客も増加するでしょう。
②堅調な外食市場。
外食産業市場規模は、25兆円あまり。堅調ながら成長しています。今後も市場として成長すると思われます。

(4)脅威 (Threats)
①さらに珍しいアフリカ料理レストラン
唯一のトーゴレストランです。しかし、さらに珍しいアフリカの国のレストランが出現すると、わずかなアフリカ好きのお客さまの奪い合いになるかもしれません。
②感染症のイメージ。2014年に西アフリカ諸国で発症したエボラ出血熱。まだ、日本での感染はあまり聞いたことはありません。
弱みと同様、①も②も、ニッチな飲食店ではあまり考える必要はありません。小規模な事業者がこれらに対応することの優先順は低いからです。

4.強みと機会で戦略

 では、売上アップの戦略を考えてみましょう。基本はSWOTの強みと機会を活かす戦略が妥当です。唯一のトーゴ料理。アフリカのエキゾチックなイメージ。失礼ながらそのイメージに反する意外!意外!の洗練された料理。このギャップが魅力です。アフリカ観光などに興味をもつ女性層と外食需要も増加しています。

 例えば、わざと入り口から中を見えにくくするなど「ちょっとした恐さと好奇心」をくすぐりながら、中に入ると素晴らしく洗練された内装と料理など、イメージのギャップの面白さ。そこにSNSなどで友達に教えたくなる要素があります。赤坂近くに滞在する外国人旅行客、好奇心豊かでセンスの良い赤坂の女性たちに「ミステリアスでソフィストケイトされた味のお店を楽しんでもらう」というのもひとつの考え方でしょう。

5.「ギャップを活かす」

 お客さまが持つ期待を推し測る、あるいはコントロールする必要があると思います。今風では忖度ですか。期待を上回ると感動し、バズが発生します。日本唯一のトーゴ料理店、「エコ ロロニョン」さんは、ここが上手かもしれませんね。

SWOT と戦略
SWOTで考える