チャーハンとは何か、チャーハンは私にとって何なのか、チャーハンに神は宿るのか、チャーハンの未来は…さまざまな思いを胸に、今日もチャーハンを求め街中をさまよう。チャーハン巡礼記…。

 映画タイトル風にはじめてみました(笑)。チャーハンフリークの同僚と新橋のチャーハン専門店「チャーハン王」へ。福岡の人気店として、勇躍、東京に出店したようです。

1.ビジネスマンの聖地新橋の「チャーハン王」

 「チャーハン王」。ランチはオリジナルチキンスープ付きの980円のワンメニュー。少ない人手で効率的においしい味を提供する。いいアイデアだと思います。食事して店を出た後、フリーク同僚のコメントは、「味はいいが価格とのバランスからすると相応。サプライズがほしい」。…サプライズかぁ。さすがチャーハン通だ。

 アカデミックなブログを目指してきましたが、ふと気が付くとただのランチツアーか(笑)。しかし、一応今回も「これが食のニッチビジネスなのか」がテーマです。

2.お店の状況の分析

 食レポはさておき、3C(Customer=お客さま、Company=自社、Competitor=競合)でお店を分析をしてみましょう。

(1)お客さま:新橋のビジネスマン

 来店するお客さまはズバリ、ビジネスマン。チャーハンメニューとしては一般のお店よりも少しだけ高いかもしれません。しかし、ニッチビジネスであれば高い価格設定は当然。安くしてはいけないと思います。ハイクラスの新橋のビジネスマンに絞り込んでいる点ではバッチリだと思います。

(2)自社の強み:高い専門性

 米のこだわり、調理法のこだわり、お客さまへの食べ方指導。メニューの裏にびっしりと書かれています。味へのこだわりは半端なものではありませんね。「王」という名前をつけるだけのことはあります。チャーハン道における専門性の高さをアピールしています。ブランドを作って行く上でも重要だと思います。

 閑話休題。「食べ方指導」を最近よく見かけます。高飛車な雰囲気もありますが、文化人類学の先生から「様式美を追求することで、ブランドの価値を高めることができる」というような話を聞いたことがあります。そういえば、おごそかな宗教儀式もなんだかありがたい感じがします。

(3)競合店:近くに多数あり

 ここが問題です。近隣にチャーハン専門店はありませんが、新橋なので、あまたの中華料理店があり、チャーハンが食べられます。いかに味自慢といえども、中華料理店との価格競争に巻き込まれると思います。大変。これはどう考えるべきなのか…お客さま、自社の強みではいいが競合とどう戦うべきか…、ということで、チャーハンの神と未来を求めてさらなる巡礼へ。

新橋チャーハン王

3.もうひとつのビジネスマンの聖地、神田で。

 チャーハン専門店をネットで調べてみると、神田に「肉あんかけチャーハンの炒王(チャオ)」というチェーン店があります。場所は西神田の商店街の入り口、ビジネスマンの聖地の中の聖地。訪ねた日は29日。なんと29日はニクの日で、通常価格680円が500円(税込)になっています。安い!

 「肉あんかけチャーハン」に絞り込んで、カテゴリー化しているところがとてもいいと思います。
近隣に肉あんかけチャーハンを出す中華料理店はあまりないと思います。3C分析という意味では、競合との差別化ができます。

 しかし、この680円という低価格でありながら、さらに500円で提供するということはどういことのなのでしょうか。ニッチビジネスとして成立しているのならば、低価格で提供する必要はないはず。実際に食べた印象として、中華丼に近いという点が少し気になりました。中華丼同様のあんかけ風メニューの天津丼やマーボ丼なども実質的に競争になっているということかもしれません。

 お客さまはビジネスマンに絞り込まれ、商品としての独自性もある。しかし、類似商品との差別化が厳しく、価格競争に巻き込まれているということか…、チャーハンの神と未来を求めてさらに巡礼の旅は続くのであった…

肉あんかけチャーハン炒王

4.チャーハンを求め、ついに海外巡礼へ。

 チャーハンの神を求めてついに中国を経てインドまで来た。私はチャーハン三蔵法師なのか。…といっても実は、西葛西。でも、ここはほとんどインドです。都内のIT系の会社に勤めるインドの方が多く住んでいます。インドレストランも西葛西駅近くに10店近く。インターナショナルスクールもあり、とてもハイレベルな感じです。

 駅から数分のインド料理店「ムスカン」。チャーハンフリークの同僚が「ビリヤニ」というメニューを紹介してくれました。インド風チャーハンのようです。ネットで調べると正しくはピラフのようなものでもあります。食べてみるとちょっと辛いカレー味のチキンライス。おいしい!

西葛西ムスカン

5.チャーハンのニッチビジネスとしての「ビリヤニ」

 「ビリヤニ」はチャーハンのニッチビジネスのひとつの解答かもしれません。なぜ「解答」なのかは、まさしくチャーハンとは何なのかという定義にまでさかのぼる必要があります。

 有名な話なのでご存じの方も多いかもしれません。映画会社の話です。映画会社の事業を「映画を製作する会社」と考えるか、「エンターテインメントの会社」と考えるかということです。別ないい方では、事業を物理的に定義するか機能的に定義するかというものです。

 ここで、チャーハンは「中華料理」のチャーハンと物理的に考えるか、中華料理に限定せずに「炒めたライス」と機能的にとらえるか、ということになります。機能的なとらえ方は、曖昧になりやすいというデメリットもありますが、柔軟に考えて、将来への展開も考えられるというメリットもあります。

 物理的か、機能的かは決めの問題ですが、機能的に考える方がいいと思います。インド料理といえばカレーであり、「ビリヤニ」はまだ馴染みがありません。

 ターゲットのお客さまは、カレーが好き、チャーハンが好きなビジネスマン。競合である中華料理店のシェフには「ビリヤニ」は作れません。ニッチなメニューなのでチャーハンよりも高い価格設定も可能です。
 商品としてまだ目新しい「ビリヤニ」。チャーハンのニッチビジネスとして「ビリヤニ」専門という選択はあると思います。また、同じ考え方で、アジアのチャーハン的な料理もニッチビジネスの可能性があると思います。

チャーハンとビリヤニ

5.データから予測するチャーハンの未来

(1)中華料理店の売上は低下傾向

 中華料理店はどうやら厳しい状況です。高級中華料理はともかく、一般的な中華料理店が厳しいですね。この要因は、次のギョーザのデータにあるように、単品メニューが分化して専門店ができてきているからではないでしょうか。

中華料理店の売上高推移

(2)中華単品メニュー専門店の成長

 ラーメンはもとより、ギョーザ、チャンポンなどがチェーン店として広がっています。特に、餃子専門チェーン店の売上高が大きく伸びています。中華の単品メニューでの専門店化にはチャンスがあるのかもしれません。
 チャーハン専門店で大きく成長しようと思うと、早くに投資を行い、競合と戦い、勝利すれば大きな市場を獲得できます。ニッチビジネスとして市場に参加する場合は、ビリヤニのように、今よりもさらに絞り込んだ考え方が必要になると思います。

餃子店の売上高推移

(3)チャーハンの家庭消費も成長

 2014年は消費税値上げで減少していますが、冷凍食品のチャーハン、ピラフも成長しています。チンして手軽に食べられることがポイント。各メーカーもチャーハンに注力しているようです。外食市場としてチャンスがあること、家庭内市場も成長が見込まれること、つまり、チャーハンの未来は明るいといえると思います。

冷凍米飯の販売額推移

 海外にまで足を伸ばした(笑)今回のチャーハン巡礼記は一旦、ここで終了です。この巡礼、面白いので続編があるかもしれません。乞うご期待です。