1.健康食品の市場は2兆円以上
正確には2.4兆円以上です。大きな市場です。コロナ禍ですが業界が不調とは聞いていません。健康食品メーカーは頑張ってこの市場をつくりあげました。健康市場はこれからも成長します。しかし、「健康飲食店」というカテゴリーはありません。飲食店もマーケティングに力を入れて、この市場をつくるべきです。
健康食品には明確な定義はありません。厚生労働省では、単なる食品である『いわゆる「健康食品」』と法律で決められた「保険機能食品」のこととしています。この健康食品市場は成長しています(図参照)。特に、2015年にできた機能性表示食品が成長。市場全体をひっぱています。
しかし、健康食品は少し問題もあります。これまでに健康被害やウソの効果・効能の広告などがありました。それでも健康食品を利用する人がたくさんいます。多くの人が「健康になりたい」と思っているからです。だから健康食品メーカーは一生懸命です。商売熱心です。なにしろ2兆円市場です。
健康食品で売れている商品をご存じですか。保険機能食品の売上高上位ふたつは、生活習慣病予防と整腸効果(お通じ)です。このふたつで60%を超えています。健康食品メーカーはお客さまがなにを求めているのか、よく知っています。
2.健康になるなら日常の食事から。つまり飲食店ビジネス
健康になるためにはどうするか。厚生労働省、消費者庁のWebサイトでは、適度な運動、適度な休養、健全な食生活といっています。特に生活習慣病予防に関しては、2008年から、おなかまわりを測るメタボの検診がはじまりましたね。健康のためには食べすぎ、飲みすぎしないことです。
これは健康食品が解決することではなく、日常の食事で解決すべきものです。食事は家で食べる食事と外食です。飲食店の責任は大きいはずです。いや、飲食店にとって大きなビジネスチャンスのはずです。
一般的な食品である加工食品市場は約22兆円です。このうち健康食品が2兆円以上。一方、外食産業市場は約25兆円。このうち「健康飲食店」は……、ありませんね。勝手な計算ですが、食品の1割が健康食品なら、飲食店の1割は「健康飲食店」になってもいいはずです。
現在でもサラダレストランのような野菜中心のお店があります。しかし、「野菜はカラダにいい」というイメージが中心。健康食品のような押しの強さがありません。テレビの番組だと思って見ていたら、いつのまにか青汁のコマーシャルになんて…。健康食品メーカーはよくよく考えています。つまり、マーケティングに力を入れています。
3.すでに、はじまっている「健康飲食店」
「健康飲食店」と考えられるお店が、実はすでにいくつかあります。銀座にあるファンケルのレストラン「ブラウンライスミイルズ」。健康食品はファンケルの大きな事業のひとつです。玄米を使ったパスタなどを提供しています。計測機器のタニタの「タニタ食堂」もそうです。健康メニューで評判になった社員食堂が社外に展開。生活習慣病予防の食事です。噛みごたえのある野菜と低カロリーのメニューを提供しています。初台にある「かんてんぱぱcafé」は寒天の伊那食品工業のお店です。寒天は食物繊維が豊富。お店は整腸効果を気にする中高年女性のお客さまでいっぱいです。
3店とも飲食店ビジネスの会社の経営ではありません。健康関連企業のお店です。アンテナショップのようです。幸か不幸か、まだ、本格的にビジネスに参入していません。しかし、参入を決めたら、すぐに大きなうねりになるはずです。
4.いまだから、マーケティングを強化
飲食店ビジネスにとって、いまは大変な状況です。しかし、いまだからこそ考えるべきです。これだけの健康需要があるのに、飲食店ビジネスに健康カテゴリーがないのが不思議です。
新しいカテゴリー、簡単ではないと思います。しかし、事例はすでにあります。実現するためには、以下の3つのことが必要と考えます。
①考え方の転換。「健康飲食店」とはどんなお店なのかです。これまでのように、単に食事を提供するだけではないはずです。
②ニッチ・ビジネスの認識。9割のお客さまは「満腹、おいしい、低価格」がご希望です。ここは大手チェーン店にまかせるところ。全体の1割がお客さまと考えます。
③マーケティングの強化。他の業種と比較すると飲食店ビジネスでは、マーケティングが不足しています。ここは、がんばりたいところです。
これらのことについては、後日あらためてレポートさせていただきたいと思っています。
そういえば「紅茶キノコ」。40年以上前の健康食品。あやしかったですね。「またブーム?」という新聞記事をみかけました。「人間は歴史から何も学ばない」とだれか偉い先生がいっていた気がします。
昨日のお昼、何食べたか忘れている私もですね。 …そういうことじゃないか(^_^)
(参考)
『H・Bフーズマーケティング便覧2019』(富士経済)
『外食産業マーケティング便覧2018』(富士経済)
高橋久仁子『「健康食品」ウソ・ホント』講談社ブルーバックス 2016年
松永和紀『効かない健康食品 危ない自然・天然』光文社新書 2017年