1.人気のブータン料理店
代々木上原、ブータン料理店「ガテモタブン」。(ブタンでなくタブンですよ)。
ランチに伺いました。驚きました、満席です。夜も賑やかなことだと推察できます。
お店は創業から11年目ということだそうです。
この業態で、しかも珍しい国の料理で11年続くというのは素晴らしいことだと思います。
敬意を表します。経営者の方の、ここまでの艱難辛苦は計り知れないものがあると思います。
ガテモタブンさんのホームページはデザインもかわいく、美しい。
きれいな料理写真や食材写真のブログが定期的に更新されていて、
興味を持った女性のお客さまに、行きたいと思わせる仕掛けがいっぱいあります。
TV番組の取材や皇室の方の訪問など、時の風もありますが、
満席になるにはそれなりの努力があったからとお見受けいたします。
2.幸せの国ブータン王国
インドと中国の国境沿いにあるブータン王国は人口約78万人。
国土の広さは九州と同じぐらい。
ブータン政府観光局の発表によれば、日本人訪問者数は2012年に最高で6,967人。
マーケティングとして考えると、ブータン王国への観光客を見込み顧客としても、やはり少ない。
恐らくこの店のお客さまの多くは、私も含めてですが「ブータン料理ってどんなもの」と
思っている人たちだと思います。あくまでも推定ですが。
3.もうひとつ驚いた
ランチを終えてお店の外に出てみると、なんと道の向かいにもう一軒、
ブータン王国の家庭料理、ダツィ専門店 「カームス」というお店があります。
驚きです。どうやら最近できたようです。
日本でも稀な料理店が2軒近接。老舗のガテモタブンさんでは、やや複雑な思いと
推察いたします。
さてこの問題をどう考えるかです。
4.結論は「良い状況」
先行するお店は「参入障壁」で防衛を。新しいお店は「チャレンジャー」として成長を。
二つのお店が近くにあることで、互いに切磋琢磨すると思います。
結果、この小さな市場が拡大し、どちらにもメリットが生まれる「良い状況」だと思います。
どうでしょうか。
「厳しいビジネス社会」なのにややロマンチックで甘い考えでしょうか。
5.努力で魅力的な市場に成長
この小さな小さなブータン料理店という市場、これまで独占だった先行のお店の
メリットは大きかったと思います。
一方、この市場を開拓するには、想像もできない努力と莫大な経営資源が
投入されたと思います。
その結果、市場として成長し、つまり魅力的な売上げが生まれ、
2軒目が参入したということだと思います。
6.先行するお店の戦略は「参入障壁」
先行するお店はここで「参入障壁」=新しいお店が入りにくいと思う「壁」について
考える必要があると思います。経営学者のポーターの考え方です。
お店の場合では、現実的でないこともあるでしょうが、いくつか方法があります。
①ブランド化する
差別化し、ブランド力を高める。ホームページやお店のつくりも素敵ですが、
さらに広告を出したり、お客さまへのサービス力を高めたりして、ブランド化します。
新しいお店に「かなわない」と思わせます。
②投資する
リスクを伴いますが、投資によってブータンらしいイメージで店舗を改装し、
規模を大きくします。新しいお店が「差がついちゃった」と思うようなお店にします。
③効率化させる
つまり低価格戦略です。お店を大きくし、お客さまを増やし、材料費や人件費コストを
下げることでお客さまへの提供価格を下げることです。
「この品質でこの価格ではウチは無理」と新しいお店に思ってもらうことです。
何もしないで低価格戦略をやってしまうとお店がつぶれてしまいます。
7.新しいお店の戦略は「チャレンジ」
実はこのお店がとっている今の戦略がすでに正解かもしれません。
お店のキャッチフレーズは「ブータン家庭料理、ダツィ専門店 」です。
この小さな小さな市場の中で、さらに絞り込むとは大胆な手法です。
8.結論は「ポジティブ」と考える。
コトラーの競争地位別戦略では、先行するお店は「リーダー」としての位置づけです。
2番目のお店は「チャレンジャー」です。何かしらリーダーに挑戦するテーマが必要です。
それが「ダツィ」です。ダツィ料理にさらに、さらに磨きをかけることで、
お客さまを獲得し、リーダーに追いつくことが可能です。
お客さまに「この店が好き、ここのダツィが好き」と言っていただき、
リピートで利用していただくのがポイントだと思います。
ブータン料理店のような小さな市場規模では、2店存在するのは厳しい状況だと思います。
しかし、お客さまのメリットや長期的な観点で見ると、ポジティブな状況で「良い」と考えていいかもしれません。
8.結論は「ポジティブ」と考える
ブータン料理店のような小さな市場規模では、2店存在するのは厳しい状況だと思います。
しかし、お客さまのメリットや長期的な観点で見ると、ポジティブな状況で「良い」と考えていいかもしれません。
珍しいブータン料理店が向かい合って2店あれば、「何なんだ?」という話題性が高まります。
認知が高まるのです。そうすることによって市場規模の拡大が期待できます。
先行するお店は、ブランド力で市場規模拡大・新規顧客の獲得、新しい店は自店の顧客の
囲い込みというポジションで、二つにくっきりと分かれます。
また、二つのお店が競うことで料理だけでなく、接客やサービスも競うことになり、
レベルがアップします。これによって、お客さまの満足度は高まり、
お客さまの増加も期待できます。
近くにお店が出てしまった、または出すことになってしまったという2店にとって、
ポジティブに考えたほうが、結果的には良いように思います。