The marketing for niche restaurants

曖昧ニッチ飲食店の概要:ニッチではないニッチな飲食店ような飲食店について考える

 難問です。一見するとニッチな飲食店。しかし、よくよく考えてみるとニッチとは言いにくい飲食店があります。曖昧です。しかし、面白そうなニッチと思える飲食店は、だいたいここに集中しています。特徴は「おいしさ」へのこだわりです。したがって競争になります。さて、どうするかです。

ニッチなのか、ニッチではないのか。どう考えるべきか。曖昧なニッチな飲食店

 ニッチ、ニッチとつぶやきながら歩いていると、ニッチな飲食店は意外にもカンタンに見つかります。ひとつのメニューやひとつの食材を専門にするお店があります。でも「本当にニッチな飲食店なのか」です。ニッチなこともありますが、ニッチでないこともあります。

●驚きと面白さと心配と。愛しきニッチな飲食店

 渋谷・神宮前に世界の朝食をテーマにしたレストラン「ワールドブレックファスト・オールデイ」があります。スウェーデン、ポーランドなど定期的にテーマを変えながら提供しています。本格的で、しかも洗練された料理です。素晴らしくて面白い。ニッチですね。
  
 中央区・新川に中国、西安発祥のビャンビャン麺のお店「秦唐記」があります。麺が一本でできています。ビャンという漢字の画数が57画もあることもあり、珍しいと話題になりました。これもニッチです。
   
 ひとつの食材をテーマにしたニッチな飲食店もあります。マッシュルーム専門、アボカド専門、ニンニク専門、山いも専門、納豆専門、オリーブオイル専門などがあります。
 
 高級和牛の松阪牛専門、北海道厚岸産の牡蠣専門などもあります。みそ専門、しょうゆ専門、出汁専門など調味料専門のお店もあります。探しだすとキリがないほどです。これもニッチですね。
  
 ニッチな飲食店は驚きと面白さがあふれています。「これでお客さん来るのかな。どうしてはじめたのかな。うまくいくのかな。」と心配だったり期待したり愛しいと思ったりします。「お前に言われたくない」と言われてしまうかもしれません。
  
 ニッチな飲食店と思われる店は意外にたくさんあります。

ひとつの食材のニッチな飲食店
●ひとつのメニューの飲食店。どこまでがニッチなのか。やや曖昧

 豚しょうが焼き定食専門というお店もあります。トンカツ定食、刺身定食など数ある定食のなかから、たったひとつ、豚しょうが焼き定食に特化しているわけですからニッチです。ひとつのメニューの専門店の店も探すとあちこちにあります。
  
 以前お話しした「そうめん屋」さんもそうでした。そのほか豚汁定食専門、みそ汁専門、かき氷専門、スパゲッティのカルボナーラ専門などもあります。みんなニッチですね。
  
 ひとつのメニュー専門ということなら、いまはメジャーになった牛丼もそうですね。天どんのチェーン店も、かつ丼のチェーン店もあります。チェーン店化するようになると、ひとつのメニューと言ってもニッチではありませんね。
   
 微妙なところでは、オムライス専門やチャーハン専門などはどうでしょうか。たくさんではありませんが、お店の数はそこそこあります。ニッチなのかそうでないのかわかりません。どこまでをニッチとするのかキッチリと線引ができないからです。曖昧です。

ひとつのメニューのニッチな飲食店
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●ニッチな新メニューなのか。ニッチな新カテゴリーなのか。やや曖昧

 これも判断が難しい例です。東京・西葛西の「スパイス・ラー麺卍力(マンリキ)」。大変な人気店です。スパイスの刺激的な味わいが新鮮。休日は長い順番待ちの列ができます。
  
 ラーメン業界は熾烈な競争社会。もともと西葛西は「リトル・インディア」とも呼ばれるインド人が多い街です。スパイス・ラーメンは、ここに集まるインド食材店のスパイスを使ったものと思います。
   
 スパイスを調べてみると、日本のスパイス市場は大きく成長していました。調査会社、富士経済によると「ホール・粉末スパイス類の販売額」は368億円(2018年見込)。5年前と比較すると16%も成長しています。比較的安定していることが多い食品市場から考えると急成長です。
   
 気候変動、温暖化で日本でもスパイスが必要になったのか…。それはともかく、スパイス人気に目をつけ、ラーメンにしたのはすばらしい発想力だと思います。
   
 スパイス・ラーメンはラーメン業界の新メニューとも言えますが新カテゴリーとも言えます。似たような例は担担麵です。ラーメンのひとつのメニューなのか、「いやいや別カテゴリーですよ」なのかです。新メニューでニッチか新カテゴリーでニッチか。どちらでしょうか。やはり曖昧です。

2.共通項は食欲。つまり差別化戦略。それはニッチではなく競争の世界

 なぜ曖昧なのか。理由はニッチではなく差別化だからです。おいしさのための差別化だからです。差別化とは競争のためのひとつの作戦です。独自のポジションであるニッチとは違います。

●食欲を満たす店だから曖昧になる

しています。
  
 いざ豚しょうが焼きのお店に行ったら「先客でいっぱいだ…」。そんなときは「手っ取り早く牛丼屋に行くか」となります。「どうしてもここで食べたい。頭の中は豚しょうが焼きでいっぱいだ」。そんな人はなかなかいません。もしそうだとしたら、もっと一生懸命に仕事したほうがいいかもしれません。およその人は「豚しょうが焼き定食専門」のお店がダメならほかの店に行くことにします。
  
 曖昧なニッチな飲食店に共通するのは食欲を満足させるお店であること。全国の飲食店の数は約62万店です(総務省2014年)。ほぼすべての飲食店が「おいしさでおなかいっぱいに」のために営業しています。ひとつのメニューに絞っても、食欲を満たすための店であることに変わりありません。

●差別化すること。それはニッチではなく競争

 差別化は飲食店が競争を勝ち抜くためのひとつの方法です。差別化であるなら、それは競争の世界です。独自ポジションが身上のニッチとは違います。
   
 松阪牛専門の店もありました。これも差別化です。ニッチというなら「松阪牛以外の牛肉は食べられないよ」となるはずです。しかし、そんな人はいませんね。神戸牛でも近江牛でも米沢牛でもOKですよね。「ゼイタクですけど」。
   
 差別化にはいくつかの方法があります。『競争の戦略』で有名な経営学者のポーターは代表的な方法として製品、サービス、イメージの差別化をあげています。飲食店の場合は製品。すなわち提供するメニューです。お店の自慢のメニューで差別化しています。
   
 差別化で競争となると大変です。豚しょうが焼き定食で人気店になったら、新しい競争相手があらわれます。新しいお店は食後にコーヒーのサービスがついたりします。あるいは、ごはん大盛が無料になったりします。
   
 競争が行きつくところは価格競争です。お得セットや無料サービスでやがて利益が減少します。競争なら資金と人手が豊富な大手企業のチェーン店が有利です。
    
 食欲という土俵のなかで、差別化によってお客さまを満足させようとするなら勝負です。競争です。ニッチではありません。ニッチであるかないかは、そこに競争相手がいるか、いないかです。

●食欲を満足させることの次。どのように食べるのか

 それでも「おいしさでおなかいっぱいに」は重要な仕事です。しかし、この仕事はコンビニでもスーパーでもデリバリーでも持ち帰りでも、もちろん自宅でも十分にできることです。
   
 75年前の戦後は空腹を満たすことが最優先でした。もはや、この時代はとっくに終わりました。さらに、まもなく「おいしさでおなかいっぱいに」も終わります。
  
 過剰なカロリーの摂取が問題だからです。テレビでは、たっぷり甘いスイーツやこんがりの焼肉の情報を流し続けています。一方で、食べすぎによる生活習慣病が医療費を膨らませています。スーパーには糖質ゼロや糖質カットの食品がいっぱい並んでいます。
   
 飲食店もこの問題に無関心ではいられないはずです。ところが飲食店は健康的な食事にあまり関心がありません。糖質が少ないとおいしくないからです。
    
 残った食品を捨ててしまうことも問題になっています。日本では、いま年間約612万トンの食品ロスが発生しています(平成29年度 環境省+消費庁)。また、気候変動により、これ以上の食肉の生産が難しいことも問題になっています。肉の代わりに大豆やコオロギを食べることも話題になっています。
   
 すべての飲食店が「おいしいものでおなかいっぱいに」にこだわる時代ではありません。おなかいっぱいにではなく、どのように食べるかが重要になってきています。

●いまだから価値が問われている。価値ある「ニッチな飲食店」へ

 2021年はコロナ禍でした。在宅ワークで自宅ランチ、夜は家飲みの人が増えました。飲食店のお客さまは減少。昔のような状態に戻るのかわかりません。
    
 それだけではありません。日本は人口減少社会です。飲食店のお客さまは減っていきます。この先も外食産業全体の市場規模は小さくなっていくはずです。
    
 以前お話しした生産性の話です。飲食サービス業の生産性は299万円/人(「中小企業白書2016」)。日本のすべてのビジネス18業種のなかで「最低」です。しかもブービーである医療・福祉業から100万円以上も差をつけられてのドンジリです。
  
 市場は小さくなるのに、生産性が低いとは…。なんとかしなければなりません。生産性を高めるなら方法は二つ。働く人を減らすか売上高をアップさせるかです。
   
 大手外食チェーン店ならともかく、小さな飲食店で働く人を減らすのは命取りです。もうひとつの売上高を高めるには付加価値が必要です。
    
 差別化でも付加価値を高めることができます。でも厳しい競争です。やがて実質値引き。付加価値が下がります。付加価値を高めるなら「この店だけ」というニッチです。
     
 ニッチな飲食店で安売りにならなければ売上高も利益もあがります。「日本中でこのお店にしかできない特別な料理」ならば「なんぼでも払う」という人がでてきます。
   
 「この店だけ」の理由です。理由とは価値です。付加価値です。付加価値が上がれば、売上高があがります。売上高があがれば生産性があがります。利益がでます。利益がでればブラックから抜けられます。日本の飲食サービス業の大問題、「飲食店はブラック産業」と言われる悲しい現実が改善できます。

 ニッチのような飲食店では価値が生まれません。競争になってしまいます。差別化で競争に勝とうとするからです。差別化ではニッチとは言えません。ニッチは独自の地位だからです。

 付加価値をもつ独自地位であるニッチな飲食店を目指すことです。曖昧ではない「ニッチな飲食店」です。難しくはありません。マーケティングで考えればできることです。

飲食サービス業の労働生産性

<参考文献>
『中小企業白書2016』中小企業庁 2016年

健康ニッチ飲食店の予測概論:健康食品があるのに「健康飲食店」がない

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