The marketing for niche restaurants

愛好ニッチ飲食店の予測:ストーリーで人を呼ぶ「物語レストラン」

 週刊少年ジャンプの『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(こち亀)は40年にわたり連載されました。物語によって継続し成功した事例です。

物語レストランとして飲食店ビジネスにも応用できないでしょうか。ファンとなるお客さまがいて長く続くことになれば成功です。

物語マーケティング(ストーリー・マーケティング)は、マーケティングの世界でも効果的な手法として知られています。

●バッグは沈まなかった。ストーリー・マーケティングという手法

 1912年、北大西洋でタイタニック号が沈没しました。冷たい海に投げ出されたにもかかわらず、有名ブランドのバッグにつかまって助かった人がいたという話が伝わっています。しっかりと防水加工されていたバッグは沈むことがなかったため、助けが来るまで浮かんでいられたということでした。

 ことの真偽は確かではありません。しかし、もともとあった製品の確かさと人命を救ったという話、ストーリーによって、このブランドはさらに名声を高めました。
  
 1980年代後半、「ビックリマンチョコ」が人気になりました。神話的なお話しに登場するキャラクターたちがおまけのシールになっていました。コレクションがブームとなり、子どもたちのあいだで過熱。社会問題となり公正取引委員会が出てくるほどになりました。行き過ぎた事例かもしれませんが、物語で商品を売るという事例です。
   
 ストーリー・マーケティングあるいは物語マーケティングともいいます。物語には大きな力があります。ほかの商品との差別化ができます。伝えるべきことが記憶に残ります。なにより、だれかに伝えたくなるという効果があります。

●物語で飲食店ビジネスをつくる「物語レストラン」

 物語によるマーケティングで飲食店にお客さまを引き寄せることができるかもしれません。
   
 マンガ・アニメは日本の大きなビジネスです。市場規模は合計で3兆円を超えています。これから、さらにデジタル化が進むことによって成長が加速するはずです。
  
 マンガ・アニメのひとつの特徴は物語が長いあいだ続くことです。飲食店も長く続く必要があります。飲食店のメニューやサービスをマンガ・アニメの物語の仕組みで提供していくことができないでしょうか。
  
 「物語レストラン」です。マンガ・アニメのように続き物のストーリーとして、毎回違ったメニューなどを提供するレストランです。そのメニューには物語があります。そして、物語は長い期間にわたって大きく展開していくという構造です。
   
 物語は設定からはじまります。ファンタジーの世界として過去から未来までの壮大な物語です。そのなかの小さなことが、海に浮かぶ氷山のように現象としてあらわれるところから物語がはじまります。

●少数民族が神々に供する食事が登場する

 たとえば、こんなストーリーはどうでしょうか。ある日…。

 恐れていたことが起きた。しかも、同時に起きたのだ。東南海大地震、首都直下大地震、北海道沖大地震、三つの大地震が連発したのだ。大きな地殻変動が起き、日本の国土の大半が水没してしまった。行き場を失った人びとは、国内にある船という船を使って脱出。しかし難民となってしまったのだ。
   
 幸いにして、数千万人ともなる日本の難民を受け入れてくれる国があった。はるか南東の太平洋に浮かぶノッピン国(NOPPIN)だった。国土の広さも気候も風土も日本に似ている。しかし、大きく違うのは多民族国家であることだった。それも200を超える少数民族が集まる国であった。
  
 多民族化したのは地理的、歴史的条件によるものだった。古代からアジア、北米、中南米など太平洋に面する地域からの移民があった。17世紀の植民地時代には西洋人。同時に労働力として強制的に連れてこられたアフリカ諸国の人びと。その後の19世紀にアジア系と東欧系の移民。現代に至っては、政情が不安な国ぐにからの難民、とくに各国で迫害を受ける少数民族を積極的に受け入れてきたため異常とも思える数の民族が集まった国となったのだ。
  
 両国の友好を深めることを目的にしたノッピン国のレストランが日本の新しい首都のオヨキト市にオープンした。北部九州にわずかな国土が残ったのだ。ノッピン国の200を超える民族の料理を月ごとに順番に提供することになっている。それぞれの少数民族の神々への供物としての料理である。
   
 しかし、そこにはノッピン国が計画する大きな策略と野望が…。

 ありがちなストーリー。マンガ・アニメ界で働く人たちに「安易なアイデア」と叱られてしまいそうです。たとえば、ということでご容赦ください。

●「物語レストラン」をビジネスモデル化する

 長く続けられる物語をつくる必要があります。雰囲気を高めるために、店の内装やユニフォームなど全体をデザインする必要もあります。また、儀式を織り込むなど、お客さまにも参加してもらう仕組みも必要です。提供するメニューのアイデア、盛りつけやデザインなども大きな焦点になると思います。とても一人ではできません。
  
 しかし、この仕事、物語をつくるシステムは、すでにアニメやゲームの業界でできています。アニメは日本だけでも2兆円以上の市場です。
   
 ここには人材も豊富です。監督、演出家、シナリオライター、美術監督など多くの専門職が存在します。大きな市場であるため物語についてよく研究されています。また制作が組織化されています。この仕組みが活かせるはずです。
   
 ファンタジーの世界では舞台、登場人物、世界観、さらには地図や年表まで細かい設定をすることでイメージが膨らみます。「物語レストラン」の構想もプロの手にかかれば実現できると思います。新しい飲食店ビジネスとしてのビジネスモデル化もできるかもしれません。映画、ゲームなどの複数のコンテンツに広がれば、さらに大きなビジネスになることが期待できます。

日本のコミック・アニメ市場推移

<参考文献>
大塚英志『物語消費論「ビックリマン」の神話学』星海社新書 2021

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