The marketing for niche restaurants

提案ニッチ飲食店の予測:ひとりの食事が満足できる「ソロレス」。ママのいる店

 ファミレスという言葉があります。ファミリーのためのレストランですね。最近、ファミリーは減少中。ひとり世帯が増えています。

ひとり専用のラーメン屋やひとり焼肉の店ができています。しかし、個食化の問題を解決するための飲食店はまだできていません。個食はこれから増加します。大きなビジネスの機会になります。ひとり専門飲食店「ソロレス」が誕生しそうです。そこにはママがいるかもしれません。

●ラーメンに焼肉。ひとり専門の飲食店はすでにある

 ひとりで食事ができる専門の飲食店、みなさんが思い出すのはラーメンの「一蘭」ではないでしょうか。全国で80店舗以上あります。両どなりに仕切りがあって、本当にひとり専用にできています。
   
 しかし、同僚から指摘がありました。「一蘭は、味集中システム。味に集中してほしいから仕切られているだけ。ひとり専用のラーメン店ではない」。確かにそうかもしれません。「ひとり専用」とはすこし違うのかもしれません。
   
 もうひとつ、最近話題のひとり焼肉専門店「焼肉ライク」。すでに全国に50店舗以上もあります。しかし、ここも「ひとり専用」とは少し違うかもしれません。
   
 焼肉は多くの人数で食べると、ちょっとストレスを感じます。「俺がじっくり育てていた肉をあいつが食ったぁ」という残念なこともありますね。ひとり焼肉は自分だけで、自分の好きなものを、自分の好きな量だけ食べたいという欲求を満足させるものです。
   
ここでの「ひとり」は、ひとりで食事をするのではなく、ひとりで肉を独占したいからです。

●「ひとりごはん」の理由はひとり世帯だから

 家族の構成人数の話です。とうとう2019年、日本ではひとり住まいが最も多くなってしまいました。

 世帯全体のなかで「単独世帯」が28.8%となり、「夫婦と未婚の子のみの世帯」を上回りトップになりました。

 なかよく親子で暮らす核家族は減少を続けています。これからさらに高齢者などのひとり住まいが増えていきます。こうなると食事は好きや嫌いではなく、ひとりで食べるものになっていきます。

 コロナ禍の体験で、社会がひとりで食事をすることへの準備が整ってきたように思います。いいことではないかもしれません。しかし、そろそろ本当に「ソロレス」を考えるべきときが来たと思います。

世帯構造別にみた世帯数の構成割合

●ファミレス市場は大きいまま。ソロレス市場はない

 ファミリーレストラン、いわゆるファミレスというカテゴリーがあります。核家族が社会の中心だった時代にできました。
   
デニーズ、ロイヤルホスト、ガスト、サイゼリアなどたくさんのお店があります。カテゴリーでみると市場規模は約1兆円。大きな市場です。コロナ禍で一時的に減少してますが、これから大きく減少するとは見られていません。
  
 ひとりの食事ということでは、ハンバーガーや回転ずしなどのファストフードは多くのひとり客を取りこんでいます。これも市場規模は約3兆円の大市場です。しかし、あくまでもカンタンに食事をするためであり、ひとりで食事をするためのものではありません。
     
 前述の世帯構成の変化から考えると、ファミレスやファストフードというカテゴリーだけでは、うまく市場をとらえられないと思います。やはり、ひとりごはんのための「ソロレストラン―ソロレス」というカテゴリーが必要だと思います。

ファミリーレストラン市場規模推移
●忘れてはいけない「会食」の大切さ

 ひとりごはんの時代になる。とはいっても人類史のなかで、長く習慣としてきた「会食」を捨ててしまうことはできません。共存のための仕組みだからです。
   
 フランスの思想家、ジャック・アタリは『食の歴史』のなかで個食化について、こう言っています。

 …人類史において5000年以上続いてきた会食という社交の場は消え去り、個食化はこれまで以上に進行するだろう。
 最初になくなるのは朝食だろう。各自がその日のスケジュールに応じた好き勝手な時間に冷蔵庫から食べ物を取り出して朝食をとるようになるのだ。
 次に、昼食がなくなるだろう。職場においても社員食堂は廃止され、従業員は各自の持ち場で弁当を食べるようになる。
 そして、家族で食べる夕食がなくなる。これと同時に、家族は崩壊するだろう。独り暮らしなら、少なくとも夜は個食だ。
………
 未来のノマドは、おもに糖分を摂取しながら暮らすことで、孤独を満たそうとする。というのは、われわれは孤独感からアルコールや薬物に手を出しやすくなるのと同様に、脂肪分や糖分の高い食品をもっと食べたくなるからだ。
………
 これまで以上に多くの人々が、不健康な食生活や、会食する機会が失われたことで陥る孤独から命を落とすに違いない。これと同時に、人類全体は過食で死に絶えるだろう。

         ジャック・アタリ 『食の歴史』(第9章) プレジデント社 2020

 人類が絶滅するのかまではわかりませんが、孤独とそれによる過食で不健康になる可能性は高そうです。「ソロレス」を考えるときに、この問題を解決する必要があります。

●「小料理屋」には気遣いするママがいる

 スマホがあると、ひとりの食事も以前のように苦痛ではありません。食事するだけなら牛丼屋さんでもカレー屋さんでも、スタバのようなカフェでも十分にできます。
   
 問題はジャック・アタリが言うように、孤独とそれによる過食です。会食機能が必要です。少しだけでも会話する機能が必要です。
    
 思えば、日本には「小料理屋」という形態の飲食店があります。アルコールの提供がメインなので、そのままは使えませんが、ヒントになると思います。
   
 カウンターがあってママまたはオヤジさんがいます。ちょっと年齢の高い人が似合います。カウンター越しにネギを刻んだり魚が焼けたりするのが見られます。これだけでエンタメです。
   
 カウンターのひとり客にはママがなにげなく声かけたりします。ちょっとした話もしますが、だからといって深い話をすることはありません。
    
 「ソロレス」ビジネスで、この仕組みが使えるかもしれません。ただ、少しコミュニケーションの技術が必要になりそうです。年齢を重ねるという経験も必要だと思います。
    
 ほかにも、個食の問題を解決する手段はたくさんあると思います。いずれにしろ、ニッチな飲食店になりそうです。ニッチな飲食店なら「ソロレス」という新しいカテゴリーをつくることができるはずです。

<参考文献>
厚生労働省「国民生活調査」
『外食産業マーケティング便覧2020 No3』富士経済
ジャック・アタリ/林 昌宏 『食の歴史-人類はこれまで何を食べてきたのか』プレジデント社 2020年

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