The marketing for niche restaurants

時間ニッチ飲食店構想:新人類世代のためのレトロ飲食店

 昭和レトロの中心顧客は団塊世代やポスト団塊世代です。時間が経過すると、これまでのお客さまに代わり新しいお客さまがやってくるはずです。新たなレトロ飲食店が間もなく必要になります。すべからく早めの準備が大切ですね。

●次のレトロ市場は必ずやってくる。新人類世代のためのレトロ飲食店

 経営学者のドラッカーは「すでに起こった未来を探せ」と言っています。日本の人口減少などがわかりやすい例です。人口が減少するならたくさんの住宅や大きな学校は必要ありませんね。
   
 いまは昭和レトロが人気です。お台場のレトロ商店街や西新宿の思い出横丁は、団塊世代など昭和を知る人たちの人気スポットです。同じような昭和レトロの街がアチコチにできています。
  
 しかし、これから5年、10年たつと次のレトロになるはずです。「すでに起こった未来」ですね。そこでは団塊世代・ポスト団塊世代の次の世代にあたる「新人類世代」が新しいレトロのお客さまになるはずです。
   
 新人類とは、世代論の研究者である阪本節郎によれば、1961年から1965年生まれの人たちとのことです。新人類という名称は「いまの若い人は変わっている」「なにを考えているかわからない」という上の世代の人たちの感想からでした。
  
「わからない」というのは、日本が急速に成長した時代でもあり、社会の変化が早かったからかもしれません。その世代の人たちが間もなく60歳を越えようとしています。
   
 昭和レトロ飲食店の次に、新人類世代のためのレトロ飲食店が必要になるはずです。

世代別分類
●新人類世代が10代、20代だった1980年代がテーマ

 新人類世代は2021年から2025年にかけて60歳になります。まさしくこれからです。
  
 60歳ぐらいから過去を振りかえることが多くなります。前述した「エリクソンの発達段階」の最終段階です。
  
昔をなつかしむ場合、10代、20代のころのことが多いようです。心理学ではこの時期の記憶が多いことを「レミニセンス・バンプ(回想のコブ)」と呼んでいます。
  
 学校、就職、結婚など生きていくうえでの大きな転機などがあり、覚えていることが多いようです。したがって、新人類世代向けのレトロ飲食店を目指すのなら、ここに注目する必要があります。
   
 新人類世代では1975年ごろから1990年ごろがこの時期にあたります。1979年には、社会学者エズラ・ヴォーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が出版され話題になりました。日本が世界から注目を浴びた時代でした。
  
 1989年12月は株価が39,000円に近づき好景気に沸きました。バブル時代の絶頂期でした。いまのところとしておきますが「日本が最も輝いていた時代」でしたね。
  
 メディアでは雑誌『Hanako』で紹介されたお店に若い女の子が行列できて驚き、その去っていく早さでも驚きました。フジテレビの『オレたちひょうきん族』、松田聖子さんなどのアイドル全盛時代でもありました。今や消費の主流でもあるオタクが注目されはじめたのもこのころです。
   
 ここから5年~10年先は、新人類世代が10代、20代だった1980年代の記憶を集めたお店が、新人類世代類のレトロ飲食店になるはずです。

●新人類世代の次、「バブル世代のレトロ飲食店」もすでに起きた未来

 「新人類世代」のあとには「バブル世代」が続いています。1966年から1970年生まれの人たちです。
   
この世代は消費意欲が高いことでも有名です。「イタめし」を若い時に経験し、家庭の夕飯にイタリアンを持ち込んだ奥さまたちでもあります。
   
 さらにその後には、団塊ジュニア世代と続きます。同年代の人数は年間約170万人。2020年に生まれた子どもの約2倍の人数です。層の厚さは他の世代を圧倒しています。
   
 しかし、バブル崩壊後に20代を過ごした経験があります。フリーターや非正規社員がはじまったころを知る世代です。バブル世代のような消費好きではありません。「嫌消費」とも言われるほど、おカネを使うことには警戒感があります。一方では真面目で学びにも熱心な人たちです。
    
 世代で区切ることが正しいのかどうかわかりません。しかし、年齢が高くなれば過去の自分を見つめなおす必要があるという発達心理学の考え方を信ずるならば、年齢に対応したレトロ飲食店は、存在するべき価値があります。

●雑なくくり「シニア」にまどわされない。60歳以上は4,000万人

 「60歳以上のシニア。あまり食べないし酒も飲まないから儲からない」なんて言わないでください。「高齢者ならすべてシニア層」は間違いです。
  
 60歳以上の人口は日本の人口の約3分の1です。34.4%です(総務省統計局「人口推計」2019年10月1日現在)。4,300万人もいます。マーケティングとして全体の34%をひとくくりに扱うのは雑すぎます。
    
 もう少しきめ細かく分けて考えるべきです。しかも、ここではニッチな飲食店について考えているわけですから。
    
 60歳以上は豊かな資産があります。70歳を超えた団塊世代はアクティブです。お金も時間も健康も意欲も十分にあります。2,000円のランチなど気にしません。5,000円のワインも楽しみます。しかも無料の大盛や食べ放題は要求しません。
   
 元祖メニューの店・老舗飲食店・レトロ飲食店のカテゴリーは小さな市場です。しかし、お客さまをもっとていねいに刻んでマーケティングしていけばダイヤモンド鉱山になるはずです。

 新人類世代向けのレトロ飲食店、バブル世代向けのレトロ飲食店。ターゲットをしっかりつかめば、ニッチであっても着実なビジネスだと思います。

年齢構成別日本の人口

<参考文献>
ピーター・F・ドラッカー/上田惇生訳『創造する経営者』ダイヤモンド社 2007
佐藤眞一/権藤恭之『よくわかる高齢者心理学』ミネルヴァ書房 2016
阪本節郎/原田曜平『日本初! たった1冊で誰とでもうまく付き合える世代論の教科書』東洋経済新報社 2015

2022年6月6日掲載 2024年6月14日改稿

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