「日本ではニッチに注目が集まっていない」と以前、お話ししました。日本ではニッチの検索数が世界と比較して増えていないからです。日本はニッチ・ビジネスに向いていないとも考えられます。これに追い打ちをかけるような話があります。
   
 脳科学者の中野信子さんの説明です。脳内にはセレトニントランスポーターというタンパク質があり、この数によって人の気質が違ってくるそうです。セレトニントランスポーターは数が少なくなるS型、反対に多くなるL型があり、遺伝子の組み合わせでSS型、SL型、LL型の3タイプに分かれます。以下専門的な内容なので引用します。

 SS型ではセレトニントランスポーターの数が少なくなるため、「不安を感じやすい」「緊張しやすい」「不公平感を抱きやすい」などの特徴が現れると考えられます。LL型では、セレトニントランスポーターの数が多くなり、「不安を感じにくい」「緊張しにくい」「やや楽観的すぎる」といった特徴を持つ表現型となるでしょう。
 この割合を、日本とアメリカで比較したメタアナリシスの結果が、左に示す数値です。(注:以下、表記形式を横書き変更してあります)

 米国に比較して日本では、SS型が多く、LL型が圧倒的に少ないのがわかります。ものごとを楽観的には考えない気質です。要因のひとつとして自然災害が多い国であることも関係しているようです。災害に備えるためには警戒が必要です。自然などのさまざまな現象について楽観はできません。日本なら当然ですね。 
    
 ビジネスという視点から見ると、日本人は米国に比べて怖がりで新しいことに挑戦する気持ちが弱いということになるかもしれません。上品に言うと「慎重なタイプ」。下世話な言葉で言うと「肝っ玉が小さい」ということになりますね。
    
 ということはニッチ・ビジネスのような、ほかの人がやっていないビジネスに飛びつくのは不得意かもしれません。飲食店がラーメン屋、焼肉店、カレー屋さんばかりになるのも、なんとなくうなずけます。

 ということで「日本人はニッチ・ビジネスに向かない」。なんて結論にしないでください。
   
 むしろチャンスではありませんか。データを信じるなら、ニッチのカテゴリーで競合が少ないということになります。アメリカでは、多くの人がチャレンジするのでニッチにも競合が多数出てきます。大変です。日本ならチャンスです。
   
 時代はニッチです。ニッチに注目する人が少なければ成功のチャンスが増えます。ニッチ・ビジネスをはじめましょう。ニッチな飲食店ビジネスをお考えなら、当室までご連絡を…。最後はコマーシャルかい!

<参考文献>
中野信子、鳥山正博『ブラックマーケティング 賢い人でも、脳は簡単にだまされる』 KADOKAWA 2019