The marketing for niche restaurants

ニッチは世界で関心が高まっています。日本は……まだですね

 Googleトレンドで調べてみると世界はニッチの時代になっていました。ただし、日本はまだでした。「日本の遅れ」に原因があるかもしれません。

●日本ではニッチに注目が集まっていない

 「ニッチの時代になる。なるはずだ。なるべきだ。」と毎日、毎日つぶやきながら街を歩いています。ニッチ教の狂信者だとも自称しています。必ずニッチへと向かっていくはずです。しかし、根拠がないのでは心もとない話。「ニッチの時代だ」と叫ぶだけでは、居酒屋で飲んだくれているおじさんと同じです。

 
 ということで調べました。「Googleトレンド」をご存じでしょうか。以下の図をご覧ください。世界の国ぐにで、言葉がどのように検索されているかがわかるサイトです。その言葉(キーワード)の検索数が最も多いときを100として、時間ごとに相対的比率で表されています。しかも、「すべての国(世界全体)」でも国別でも検索できます。さすがGoogleです。


 さっそく日本での「ニッチ」と英語の「niche」を調べてみました。検索が可能な2004年1月から2021年1月現在までの状況です。さて、と見ると、なんと日本では「ニッチ」も「niche」も、ここ10年ほとんど変化がありません。


 英語のnicheは日本語のニッチとの相対的な数値となっています。2010年ごろまで振れ幅が大きい傾向があります。しかし、2012年以降は変化がなく低調のままです。ニッチへの関心が高まっていません。ニッチの時代になっていません。飲んだくれのおじさんには悲しい衝撃の事実です。なんということでしょうか。

日本のニッチ。Googleトレンド
●世界では着実にニッチへの関心が高まっている

 では、世界はどうなのかと、英語「niche」を「すべての国」で検索してみました。これは日本と違って、思ったとおりでした。2015年ごろから見事に上向きです。ニッチの時代になってきています。


 気分がよくなったので、さらにほかの言語でもやってみました。使用人口の多いスペイン語(nicho)、アラビア語(تخصص)、ドイツ語(nische)、ロシア語(ниша)です。フランス語は英語と同じスペルなので、英語と一緒のデータと考えます。結果は、2012年ごろから昇り調子。さらに、ということで国別にも調べてみました。ドイツ、ブラジル、インド、フランス、イタリアです。どの国でもおよそ2014年ごろから昇り調子です。

世界のニッチ。Googleトレンド
スペイン語、アラビア語、ロシア語、ドイツ語のニッチ。Googleトレンド
ドイツ、ブラジル、インド、フランス、イタリアのニッチ。Googleトレンド
●ニッチが高まっていないケースもある

 世界で最も話す人が多い中国語、残念ながら中国でのニッチ(利基市场)はGoogleトレンドで調べることはできませんでした。アメリカのGoogleですから当然かもしれません。


 先進国であまり変化がない国も見つかりました。イギリスです。ちょっと不思議です。お隣のIT先進国、韓国でもあまり変化がみられませんでした。


 イギリスがあまり変化のない理由はよくわかりません。ニッチの概念に違いがあるのか、すでにニッチは浸透しているのか。「大英帝国」だからニッチが嫌いなのか、島国は、日本もそうですが、すでにニッチだからニッチに興味がないのか。軽率な推測では考えられません。イギリスでニッチの検索があがってこない理由はもう少し調べてみなければわかりません。

イギリスのニッチ
●日本のニッチが高まらない理由。同調社会?ITの遅れ?

 世界のニッチの検索は上昇。しかし、日本のニッチは上昇していない。ニッチへの関心が高まらない理由はなんでしょうか。


 アマゾンの本のカテゴリーで「ニッチ」を検索すると2,000以上があがってきます。しかし、ニッチに関する書籍は、あまり出てきません。本でないドリンク用のカップや日中関係の本などがたくさんあがってきます。実数として数えていませんがニッチに関する書籍は少なそうです。


 一方、アメリカのアマゾンで本のカテゴリーで「niche」と検索すると50,000以上でてきます。当然ながら書籍ばかりが並びます。事情も違うので数値の比較はできませんが、ニッチに関する浸透ぶりの違いを感じます。


 もしかしたら、ニッチという言葉や考え方が、日本には広がっていないのかもしれません。日本は横並び社会。目立つ行動はしたくない。目立つ行動をするとたたかれる。ニッチのような「独自のポジション」という考え方には共鳴しがたいのかもしれません。


 もうひとつ疑わしいのはコロナ禍で際立ってきた「日本のIT化の遅れ」です。コロナ禍によって、世界の国ぐにが一斉に防疫対策や政治的な施策を行いました。濃厚接触者の追跡、給付金支給などです。世界の国ぐにの状況が報道され、その国のIT対応力が浮かびあがりました。これによって日本のIT化、デジタル化の遅れがわかってきてしまいましたね。


 ニッチ・マーケティングやニッチ・ビジネスという言葉は、ネットの中でよく使われています。特にアメリカなどの海外のサイトによく出てきます。ニッチという言葉はネットやデジタルの世界との親和性が高いのだと思います。


 日本のニッチの検索数が増加しないのは、横並び社会でニッチの概念の浸透が未成熟だからかもしれません。しかし、日本のIT化、デジタル化の遅れが原因ではないかという疑念も頭から離れません。 

●日本も世界を追いかけてニッチの時代に

 とはいえ、世界全体ではニッチへの関心が高まっているわけです。あらためてアメリカをみると世界同様にニッチへの関心は高まっています。もしかしたらアメリカがニッチについて引っ張っているのかもしれません。しかし、このデータだけではわかりません。


 思えば文明開化はアメリカ艦隊のペリー来航からでした。戦後のマッカーサーの占領政策、その後のアメリカ文化への傾倒など日本はアメリカの背中を追いかけてきた歴史があります。日本のニッチへの関心もアメリカや世界の高まりを追いかけていくのではないと期待しています。気をとりなおして「いよいよニッチの時代」と信じることにします。

※この記事は2021年1月25日のブログを再編集したものです。

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