ここでは8つのカテゴリーのうち提案ニッチ飲食店の事例についてレポートします。カテゴリーの区分けは別ページを参照してください。またこのカテゴリーの市場と顧客分析は予測概論を参照してください。
●コオロギのラーメンがすごい。昆虫食レストラン
「ANTCICADA(以下、アントシカダ)」。2019年に東京・馬喰町にできた昆虫食レストランです。おそらく日本ではじめての本格的な昆虫食レストランだと思います。オープンと同時にテレビ、新聞などで話題沸騰となりました。
「虫」に嫌悪感をもつ方がいるかもしれません。飲食店で「虫が入っている」なら緊急事態、頭のなかでサイレンが鳴ってしまいます。
ところがこのお店のラーメンはスゴイ。国産コオロギから取った深みのある出汁とコクのある香味油のスープ。粉末を練り込んだ中細ちじれ麺。三つ葉の上にチョコンとのった素揚げのヨーロッパイエコオロギ。「そうじゃない」という人もいるでしょうが「カワイイ」。
想像したものとはまったく違う、洗練された料理とおいしさです。
●つい最近まで、たくさん昆虫を食べていた
「昆虫食なんて無理!」ですか。しかし、数百万年前に人類がはじまったころから昆虫は大事な食糧でした。
はるか古代に地球が温暖化したときに植物が繁栄しました。そのときにカロリーが豊富な果物を食べるようになり昆虫食が減少したようです。たしかにイナゴの佃煮より「とちおとめ」や「シャイン・マスカット」のほうがおいしいと思います
イナゴの佃煮だけでなく、ハチの子やカイコなどのように日本の各地には昆虫食が伝統として、いまも残っています。戦後の食糧不足の時代には昆虫食は当然でした。つい最近まで食べていたのです。
私、戦後生まれの田舎育ちです。こども時代はイナゴ捕りがイベントでした。ひとつ年下のとなりのマリちゃんと行きましたね。夏の終わり、幼き頃の遠い思い出です。
●将来のタンパク質資源だから
将来のタンパク質不足。これが問題です。2013年にFAO(国際連合食糧農業機関)が昆虫食を提言しました。2050年には世界の人口は97億人に達すると予測されているからです。ひとりあたりのタンパク質の消費量も増加しています。やがてタンパク質の供給ができなくなることは明白です。
昆虫の養殖は牛や豚などの畜産業よりも効率的で環境への負荷も少なくてすみます。さらに栄養価の面からも優れています。
イナゴ(つくだ煮)100gあたりのタンパク質量は26.3g。牛肉や豚肉と比較しても十分な栄養成分です。「イナゴつくだ煮はそんなにたくさん食べられない」ですね。でも、この先は上手に加工されて出てくるのだと思います。
昆虫食の重要性はまだ未解明です。もしかしたら健康への効果のある成分が含まれているかもしれません。食べることが広まることで研究が進むものと思います。
●成長が期待できる昆虫食レストラン
昆虫食レストランは、日本でもニッチですが世界でもニッチなレストランになるはずです。昆虫食の重症性が認められると、昆虫食レストランも大きく成長するかもしれません。
詳しくは成長ニッチ飲食店の予測ページをご覧ください。
<参考文献>
香川明夫『七訂食品成分表2020』女子栄養大出版部 2020