The marketing for niche restaurants

曖昧ニッチ飲食店の事例:一つの食材専門飲食店はニッチなのか

 ここでは8つのカテゴリーのうち曖昧ニッチ飲食店の事例についてレポートします。カテゴリーの区分けは別ページを参照してください。またこのカテゴリーの市場と顧客分析は予測概論を参照してください。

●アボカドメニューの専門店はニッチな感じ

 一つの食材だけを専門にする店。ねらいがシャープ。わかりやすいですね。たとえば、神田にあるアボカド専門のレストラン「アボカフェ」。
    
 アボカドの輸入量は10年前に比べると約3倍になっています*。消費が急速に増加したということは家庭での消費も増加しているはずです。アボカド好きの人たちは、専門料理店のメニューを食べてみたい、あるいは家でつくるメニューのヒントにしたいと思っているはずです。
   
 アボカドはメキシコ料理店などでよく出てきます。しかし。アボカド専門のレストランとなるとほとんどありません。食べログで調べても全国で数店です。アボカド専門の飲食店はニッチな飲食店のようです。

*アボカドの輸入実績:平成19年約26,500トン、平成28年73,900トン(出典:「神戸税関」平成29年発表 神戸、横浜、東京、川崎、大阪、その他の港の輸入実績量)

●意外に多い。一つの食材をテーマにした飲食店 

 アボカド専門のように、一つの食材をテーマにした飲食店は意外とたくさんあります。当室で調べたものを一覧にしてみます。
   
 野菜系では、アボカドと同じように新しい食材でニッチと思える飲食店があります。マッシュルームやパクチー(香菜・シャンツァイ)の専門店などです。オリーブオイルやしょうゆなど、一つの調味料専門の店もあります。

 老舗もあります。馬肉(東京・森下)、猪肉(東京・両国)、ドジョウ(東京・駒形)などの料理店は東京でも江戸、明治からの老舗として有名です。高級なフカヒレやマグロ料理店などは平成以降の店だと思います。これらの店はめったに見かけないのでニッチな飲食店だと思います。

 松阪牛、神戸牛などの高級牛肉専門店などもあります。ブランド牛の専門店ですね。数は少ないかもしれません。ニッチなのかもしれませんがよくわかりません。

 最近お高くなったウナギ、もとからお高いフグ料理店もあります。こちらは以前からよく見かける店です。ウナギもフグ料理店もたくさんはありませんがニッチな飲食店とは言えませんね。
    
 一つの食材の専門飲食店でもニッチであったり、そうでなかったり。つまり曖昧だということです。

一つの食材専門店の例
アボカド専門店、松阪牛専門店、マッシュルーム専門店
アボカド専門店、松阪牛専門店、マッシュルーム専門店
●「差別化」を目指す一つの食材専門の飲食店

 なぜ一つの食材に絞るのか。おいしい食材で「差別化」だと思います。
    
 松阪牛の専門店。松阪牛を使った料理ならおいしくなるはずです。たぶん。しかも高級な食材なのでお客さまの単価も高くなります。ほかのお店と明らかな違いがでてきます。
    
 松阪牛専門店がニッチというなら「松阪牛以外の牛肉は食べられないよ」となるはずです。しかし、そんな人はいませんね。神戸牛でも近江牛でもOKですよね。「スーパーの牛肉は食べられない?ゼイタクですね」。
    
 松阪牛の専門店はニッチではなく差別化戦略です。差別化は飲食店が競争を勝ち抜くための一つの方法です。
    
 差別化の方法にはいくつかあります。『競争の戦略』で有名な経営学者のポーターは代表的な方法として製品、サービス、イメージの差別化をあげています。飲食店の場合は製品、すなわち提供する料理です。この場合は料理の食材で差別化しています。
    
 しかし差別化で競争するのは大変です。人気になれば新しい競争相手があらわれます。新しいお店は食後に無料のコーヒーがついたりします。おみやげサービスがついたりするかもしれません。競争が行きつくところは価格競争です。無料のサービスでやがて利益が減少します。競争なら資金と人材が豊富な大手の企業が有利になってしまいます。
    
 当企画室では、ニッチ・マーケティングにおけるニッチの定義を「独自地位」としています。競争相手がいるのなら独自地位とは言えません。つまりニッチな飲食店ではありません。

●曖昧のようでいてニッチな飲食店。生姜料理の「しょうが」

  川崎の新百合ヶ丘駅近くにある生姜料理の専門店。その名も「生姜料理 しょうが」。入店待ちの列ができる人気店です。2022年現在、経営者が2代目になられているようです。
     
 この店の特徴は専門の生姜のコンテンツがあることです。メニューはすべて生姜料理。ここの店にしかないオリジナルメニューです。メニュー名もみんな長いですね。「ふむふむ、なになに、どういうもの?」と読むだけでも楽しくなってしまいます。これなら「もう一度来たい」という気持ち(再来店の動機)になりますね。
   
 スタッフの方のユニフォームのTシャツにも生姜の「福作用」がびっしりと書かれています。さらに、もう少し調べてみると創業者が書かれたレシピ本がたくさんありました。生姜を使ったレシピと生姜情報が満載です。ご自身を「生姜の女神」と称されています。納得ですね。
    
 生姜専門に特化して、オリジナルのメニューがたくさん。しかも潤沢な生姜のコンテンツによってお客さまと交流ができる。これなら生姜ファンが店にやってきます。これはニッチな飲食店です。

生姜料理「しょうが」
●どうなるのか。これからが楽しみ、曖昧ニッチな飲食店

 当企画室が提案するニッチの分類方法は、タテ軸を「顧客の限定性」、ヨコ軸を「市場の成長性」で見ています。顧客(お客さま)が限定されていることがニッチな飲食店の一つの大事な要素です。
    
 ベジタリアンならば、ベジタリアンのための飲食店でないと入れません。一つの食材専門の飲食店をあてはめると顧客(お客さま)の限定性はありません。
   
 生姜料理の「しょうが」は生姜ファンの店。ニッチな飲食店だと思います。ではアボカドの店はどうなのでしょうか。「このお店でアボカドがダメなら、ほかのお店で別のおいしいもの」という人もいるでしょう。しかしアボカドは栄養素としてビタミンEが豊富です。「この店のアボカドがないと生きていけない」という人もいるかもしれません。
   
 一つの食材専門の飲食店はお客さまが限定されるのか、されないのか判然としませんね。ニッチな飲食店と言えるのか微妙です。「曖昧」ということになります。
   
 決して否定的な意味ではありません。一つの食材にこだわるというこの分野には機会がたくさんあります。これから先もニッチと思える飲食店が生まれてくるはずです。
   
 ウナギ屋さんのように人気になって世間にひろがる店になるのかもしれません。あるいは「しょうが」のような生姜好きのための専門店としてニッチな飲食店になるのかもしれません。あるいは高級牛肉店のように差別化戦略の道を行くことになるのかもしれません。
   
 これから先、どんな曖昧ニッチの飲食店が出てくるのか楽しみです。期待したいですね。

一つの食材専門飲食店の行き先
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