東京で先着1名。独占市場か?「ワサビ専門レストラン」の起業構想
「これはないなぁ」と思ったのがワサビ専門飲食店です。いまのところ東京にはありません。それでも人口1,427万人の東京です。1店ならできるかもしれません。市場の独占です。「また妄想家の虚言癖。ありもしないアイデアだ」なんて言わないでください。「イケそうです」。これまでの成功事例などを参考にしてニッチ・マーケティングでできそうな気がします。
1.不可能か。「ワサビ専門レストラン」。
食べログで調べてみると「ワサビ」という名のつく飲食店はいくつか出てきます。しかし居酒屋さんか和食屋さんです。「ワサビだけのレストラン?無理でしょ…」。だれもがそう思うはずです。
しかし過去、新橋にワサビ専門の飲食店が1店あったようです。「わさびdiningつんと」という店です。和牛ステーキや刺し身など王道メニューだけでなく、ワサボナーラ、わさびチーズ豆腐など独自メニューも提供されていたようです。しかし世界中が苦しんだコロナ禍でオープンから2年で閉店。残念です。
やはり難しいのかもしれません。でも「まったく不可能ではない」ということですね。なんだかムラムラと「ワサビ専門レストラン」を構想してみたくなりました。

2.ワサビの生産量は減少中、しかし海外で人気の兆候。
農林水産省の調査によるとワサビ生産量は減少しています。つくり手の高齢化などもあるようです。
一方、家庭では手軽なチューブ入りワサビが使われていて大きな変化はありません。りっぱで高級な根のついたワサビは使わないけれどピュッとチューブから出せるワサビはよく使われているようです。
海外でもワサビ(Wasabi)が広がっているようです。「東洋の高級ハーブ」として海外からの観光客が寿司や刺し身でワサビを知って帰国、ニューヨーク、シンガポール、ドバイのような大都市の高級寿司店で食べるというケースです。
世界市場を狙うのはニッチ・ビジネス拡大の理想です。製造業ではグローバル・ニッチ・トップと言います。たとえば、「マニー株式会社」。眼科ナイフを専門に製造しています。世界シェアは約30%。トップです。
日本では小さな市場でも、世界市場を考えると大きな市場になります。そのなかでトップのシェアを獲得すれば大きなメリットです。
しかし農産品のワサビはどうなのでしょうか?近い事例では抹茶があります。お茶の生産は減少中。しかし輸出は増加しています。特に抹茶の生産はここ10年(2014~2024)で約2.7倍です(農林水産省)。抹茶ブーム、カテキンの健康機能、鮮やかな緑色などで伸びています。
国内市場は小さい。しかし海外では人気上昇。マイナーな食材ワサビにも抹茶と同じチャンスがありそうです。


3.ちょっとひと息。わさびの歴史と健康機能
(1)ワサビは徳川家康のお気に入りだった!
ちょっとだけワサビの歴史です。歴史がわかると気持ちが高まります。歴史については岐阜大学の応用生物科学部の山根京子准教授が著書『わさびの日本史』で詳しく解説しています。
ワサビ(本わさび)は日本の固有種。つまり日本だけの特産品です。もっとも古い記録は飛鳥時代、685年ごろの木簡に「倭佐俾」と書かれていたもの。つまり税として収められていたようです。
しかし、たくさんの野菜の名前が載っている古事記、日本書紀、万葉集にはワサビという言葉が出てこないとのこと。「古代からマイナーか…」。
675年、天武天皇が肉食を禁止。その代わりに魚を食べることが多くなり、魚に合うワサビが貴重な食材となったようです。しょうゆが出回る江戸時代まではワサビと酢をあわせて魚を食べていたようです。
ワサビがよく食べられるようになったのは徳川時代から。徳川家康が特に気に入っていたようです。ワサビ栽培の発祥地として知られる静岡県の有土木(うとうぎ)にはワサビ栽培の経緯についての記念碑があるようです。
慶長12年7月(1607年)駿府城に入城した大御所徳川家康公に山葵を献上したところ、その珍味の程に天下の逸品と嘉賞し、ついに有東木から門外不出の御法度品とした。また徳川家の家紋が葵であったことから、ことさらに珍重したと言われている。
出典は不明ですが、前述の山根准教授は、有東木が駿府城から安倍川沿いに30キロほど上流であり、1607年は徳川家康が朝鮮通信使を駿府城で接待したころであることから整合性のあるものとしています。
(2)注目されるワサビの認知改善機能
最近注目されているワサビの健康機能はワサビの根茎に含まれるヘキサラファン(6-MSITC)です。被験者37名を2グループに分けた実験で、ヘキサラファンを摂取したグループが8週間後に認知機能が高まったという結果が出ています(奥西 勲『わさびで脳が元気になる』P18~P19)。
ワサビは認知機能の改善につながるかもしれません。まだ実証された効果や最適な容量など不明な点がありますが、それでもここからワサビが人気になる可能性があることは確かなようです。
4.出た!ニッチ・マーケティング専門家の3つの戦略
調べてきたこととこれまでの経験から起業構想の戦略が出ました。「ほんまかいなぁ。大丈夫なの?」「イヤ、イヤ。信じてくださいよ」。
(1)「ワサビの辛さが好き」をつくる戦略
世界には辛さを愛する人たくさんいます。一番はトウガラシですね。快感と痛みで気を失うような辛さに陶酔(本人談)。眉目秀麗な女性たちは鼻水をズルズルすすりながら麻辣湯を食べています。麻婆豆腐、インドカレー、パスタ・アラビアータ…世界中の人がトウガラシにとりつかれています。
辛いものにはショウガ、山椒、コショウなどもあります。ワサビの辛さは鼻の奥に刺さるような辛み。辛いもの好きなら、ワサビの辛さを知ってワサビに取りつかれる人も出てくるはずです。
辛さの市場は巨大です。辛いもの自慢の飲食店もたくさんあります。しかしワサビの辛さは別ものです。チャンスがあると思います。
(2)「ワサビ神」をつくる戦略。
サービスや製品について豊富な知識でわかりやすく説明して影響力のある人をエバンジェリスト(伝道師)などと言います。「カタカナはワケわからん」ですね。昨今で言う「神」だとわかりやすいですね。
ワサビ専門レストランを構想するあなたなら「ワサビ神」になりましょう。ワサビ料理について深い知識ととてつもない思い入れのある人になることです。神は人びとにワサビの良さを説いてまわります。
新百合ヶ丘の生姜料理の店「しょうが」の前オーナー森島土紀子さんは「生姜の女神」としてショウガ料理を紹介し尽くして店を人気店にしました。
鉄道ファンが集まる祐天寺のカレーステーション「ナイアガラ」はレトロな鉄道グッズを博物館になるほど収集する創業者が「駅長」として人気店になりました。ワサビのレストランもお客さまを導く「ワサビ神」が必要です。
(3)「ワサビで世界!」に進出する戦略。
ワサビは海外に大きな可能性があります。寿司や刺し身でワサビを堪能した外国人観光客が自国に帰ったら、また食べたいと思うはずです。
寿司店、和食店は海外で大きく成長しています。寿司や刺し身を中心にしたワサビレストランもパリ、ニューヨーク、ロンドンなどの大都市での展開が可能になるはずです。
目黒区自由が丘のビーガン料理店「菜道」。外国人観光客のビーガンにも人気となり、本場ロサンゼルスに出店。和食ビーガン店として当地でも人気となっています。世界に市場を求めるべきです。

5.「これでイケる」。マーケティングのSTP+4Pでおさらい
ワサビ専門レストランの座を獲得するためのマーケティング施策をあらためて考えてみましょう。
(1)店についてどう考えるか? セグメント・ターゲティング・ポジショニング
STPなどとも言います。セグメント(S)とは分類のこと。ここでは「珍しいワサビの飲食店ビジネス」ですね。ターゲティング(T)は顧客のこと。ワサビを愛し、ワサビの辛さが好きな人たちです。ポジショニング(P)は競合との位置関係ですが、競合が存在しない「ニッチな飲食店」では考える必要はありません。
(2)どんな施策をするか? マーケティング・ミックス
施策を考えるときは以下の4つを考えます。製品(メニュー)・場所(店や販売方法)・価格・プロモーションです。まとめて4Pとも言います。
①製品(プロダクト):メニューの開発
飲食店の製品とはメニューです。メニューの開発が一番です。「ニッチな飲食店」だけでなく、どんな飲食店ビジネスも新メニューこそが集客の最高の手段です。
新しいメニューはお客さまを引き寄せます。日本固有種のワサビなので和食や魚料理がいいですね。「新メニュー?どんな料理なの?」と思ってもらえたら来店です。ハンバーガーも牛丼もフグ刺しも和風スパゲッティも、はじまりは新メニューでした。新メニューの開発は飲食店ビジネスの王道中の王道です。
②場所(プレイス):東京の都心部
店は東京の都心に置く必要があります。ネットで「へぇ、こんな店があるんだ」と気づいたお客さまが「行ってみよう」と思ったときに行ける場所だからです。
昆虫食のレストラン「アントシカダ」は日本橋馬喰町、ブータン料理の「ラッソーラ」は市ヶ谷です。賃料の高い繁華街である必要はありません。
ネットや店での物販についても考えましょう。独自の製品ならば大きな売上になります。かんてん料理の店、新宿区初台の「かんてんぱぱカフェ」ではお客さまが帰りに袋いっぱいのかんてん商品を買っています。
江東区亀戸の「佐野みそ本店」はおにぎりにみそ汁などを提供する飲食店。しかし本業はみその販売で物販コーナーは飲食店以上に混雑しています。独自のワサビ商品ができれば大きな売上になるはずです。
③価格(プライス):適正な利益の出る価格
近くの店との価格競争や値引きはしない。ニッチな飲食店の基本です。十分な利益の得られる価格設定にします。高価格でもたくさんのお客さまに来てもらうためにニッチ・マーケティングを活用します。
④プロモーション(広報・販売促進):「ワサビ神」が語る
情報を提供して集客することをコンテンツ・マーケティングと言います。これが重要です。情報を求める人が興味をもってくれます。私のホームページもニッチの情報があふれるようにつくっています。「いや、ホントに」。ニッチが好きな人はニッチの情報を探しています。
ワサビのことを知りたい人に情報を提供しましょう。そこで「ワサビ神」です。空から(ネット、SNS動画)、聖書で(ホームページやチラシ)、辻説法で(店での話)…。「ワサビ神」がワサビについて語り続けることが一番です。
6.まとめとして。世界への道は「ワサビ文化をつくる」
どうですか。ワサビ専門レストランができそうです。世界を目指しましょう。高い目標が必要です。
寿司や刺し身など日本の和食の文化にぴったりのワサビ。徳川家康公が愛したワサビです。江戸文化や日本の歴史や江戸文化にも結び付きます。「ワサビ文化」をつくりましょう。そうなれば世界への飛躍も難しくないはずです。
「見る前に跳べ!」。いや「石橋を叩いて渡る」。いや「鵬程万里」。…だれかこういう時の良いコトワザを教えてください。
<追伸>
冒頭の新橋にあった「わさびdiningつんと」さん。最後のインスタのメッセージは「今回は撤退しますが、必ずまた都内にお店を出します!同じ名前で!」とありました。もし再開するのなら連絡ください。できる限り協力します。ワサビには大きな未来があります。
<参考文献>
山根京子『わさびの日本史 鮨・蕎麦・刺身…和食との出会いを探る』文一総合出版 2020
奥西 勲『わさびで脳が元気になる 脳が活性化する毎日の「わさ活」習慣』主婦の友社 2023
『知って楽しいわさび旅(大人の学び旅)』産業編集センター 2017
ゲイリー・ポール・ナブハン/栗木さつき訳『辛いもの好きにはわけがある 美食の進化論』ランダムハウス講談社 2005
星谷佳功『ワサビ 栽培から加工・売り方まで(新特産シリーズ)』 農山漁村文化協会1996/02
<Webサイト>
JETRO地域・分析レポート:「日本独自のスパイス、東洋の高級ハーブ」生鮮わさびを世界へ 2026年1月8日
農林水産省「茶をめぐる情勢」令和8年1月

