競争、特に価格で競争すると大変。疲弊します。競争しないでナンバーワンになることが大切です。
ナンバーワンになるためにどうするか。私がお話しするより古典的な名著「マーケティング22の法則」*からご紹介したほうがわかりやすいと思います。22の法則のうち3つを、僭越ながら大幅にかいつまんでご紹介させていただきます。
1.一番手の法則
二つの質問があります。最初の質問。大西洋を初めて単独で横断飛行した人物の名前は? もちろんご存じだと思います。チャールズ・リンドバーグです。
では2番目の質問です。大西洋を2番目に単独で横断飛行した人物の名前は? 知っている人なんていませんよね。この本はアメリカで出版されましたが、アメリカ人でも答えられないと思います。バート・ヒンクラーという人です。まったく聞いたことがないと思います。
お客さまの心の中に入れるのは、最初の一番だけということです。コーラと言えば?コカ・コーラ。大学と言えばハーバード大学。(異論があるかもしれませんが、この本ではハーバード大学と書かれています。)
一番手(ナンバーワン)だけがお客さまに覚えてもらうことができるというお話しです。
2.カテゴリーの法則
では一番手なれなかったらどうするかです。その場合には一番手になれるカテゴリーを作ればよいのです。
ここでも質問があります。大西洋を単独で横断飛行した三番目の人物の名前は?
二番手がわからないのに三番手などわかるはずはないですね。でも、答えはアメリア・イアハートという女性飛行士です。単独で大西洋横断飛行に成功した「最初の女性パイロット」として知られています。日本人では答えられないかもしれませんが、アメリカ人ならば答えられる人もいるようです。
たとえ一番でなくても「女性で初の大西洋横断飛行」というカテゴリーを作れば一番になれるということです。基準となるカテゴリーを変えて最初にお客さまの心に入り込めばよいのです。
3.心の法則
一番手が重要。お客さまの「心の中」の一番手になることです。ひとたび、お客さまの心の中に「これが一番だ」という意識ができてしまうと変えるのはなかなか困難です。
複写機のナンバーワン企業はゼロックス。そのゼロックスはコンピュータ業界へと参入しようとしました。しかし、失敗。お客さまの心の法則では、ゼロックスとは「複写機」だったからです。
世界初のパーソナルコンピュータの名前は「MITSアルテア8800」。一番手の法則では、ナンバーワンブランドになっているはずですが、現在このこのコンピュータは存在しません。
後から参入したスティーブ・ジョブズのアップル社が発売したコンピュータの名前は「アップルII」。
単純で覚えやすいネーミング。後発にもかかわらず、お客さまの心をつかみました。当時のパソコン業界で一躍名を馳せました。
4.まとめ:心のなかの一番手
物理的な一番手よりもお客さまの心の中で一番手になることが大切。すでにあるビジネスのなかで一番手、つまりナンバーワンになるのは、小さな事業者には難しい話。しかし、ニッチなカテゴリーに限ればナンバーワンになれます。大きな市場でナンバーワンになるよりは難しくありません。
カテゴリーを作ること、さらにお客さまの心をつかむこと。この二つのことがニッチビジネスの重要なポイントだと思います。
*出典:アル・ライズ/ジャック・トラウト『マーケティング22の法則』東急エージェンシー 1994