The marketing for niche restaurants

ニッチな飲食店の戦略:同じ所に集まる

 ニッチな飲食店が同じ地域に集まる場合があります。「ライバルなのに」と思うかもしれませんがニッチな飲食店の場合には大きな効果があります。
  
 集積効果ともいいます。集ることが戦略としてできるのか。ニッチな飲食店の場合は意図的には難しいかもしれません。偶然にもそうなっているケースも多いようです。
 
 経営戦略では「産業クラスター」という考え方があります。特定分野の関連企業が地理的に集中。競争と協力を同時に行う状態のことです。具体的にはシリコンバレーのような所ですね。
  
 ニッチな飲食店も偶然を待つのではなく、積極的に集まることを意識したほうがいい場合があります。いくつか事例でご紹介します。

1.集積効果の3つの事例

(1)高田馬場のミャンマー料理店

 東京・高田馬場駅周辺にミャンマー料理店が20店ほど集まっています。高田馬場は「リトルヤンゴン」ともよばれています。
  
 高田馬場にミャンマー料理店が集まったのは、かつてミャンマー人のためのお寺が高田馬場近くにあったからのようです。ここにミャンマー人の僧侶もいてミャンマーの人たちの心のより所になっていたようです。
  
 やがてミャンマー出身の人たちが寺のまわりに住むようになり、自然発生的に高田馬場駅の周辺にミャンマー料理店ができたということのようです。
  
 ミャンマーは多民族国家です。ミャンマー料理店もモン族、シャン族などの民族ごとの店があります。またミャンマーの家庭料理や麺料理などの専門店もあります。ニッチなミャンマー料理店が同じ所に集まっているからこそ、それぞれの店が特徴を出すことになります。

 ニッチで珍しいミャンマー料理店。雑誌やテレビなどのマスメディアの取材もあります。数年前には東京メトロの広告にも登場し話題になりました。

 話題になると注目されます。日本人のお客さまも集まることになります。そうなるとニッチな飲食店が人気店になっていきます。詳しくは事例ページをご覧ください。

(2)月島のもんじゃ焼き店

 東京・月島は「もんじゃ焼き」の町として有名です。狭い月島地区に約90軒のもんじゃ焼きの店があります。店が並ぶ通りは「もんじゃストリート」と名付けられ、国内外の観光客や修学旅行の学生などでいっぱいです。
   
 もんじゃ焼きの発祥は江戸時代末期のようです。子どもたちがおやつとして食べるマイナーな食べ物でした。数十年前までは、東京の下町でしか知られていませんでした。
  
 月島には、もともと数店舗があっただけでしたが1980年代後半から人気となって店舗が増加しました。ニッチな料理にもかかわらず、ここまで大きくなったのは同業の店が集まり、地域として有名になり、集客力が高まったことにあると思います。
  
 また、組合的な組織もできました。共同広告などの活動もするようになり、知名度もあがり、さらに発展したのだと思います。

 もんじゃ焼きは月島以外にも浅草などが有名です。しかし月島のように知名度、集客力があると他の地区では対抗できなくなります。詳しくはブログページをご覧ください。

(3)神田神保町のレトロな喫茶店

 古本屋街として有名な神田神保町。ここに「ラドリオ」、「さぼうる」、「ミロンガ・ヌォーバ」、「伯剌西爾(ブラジル)」などのレトロな喫茶店が集まっています。

 店は昭和の純喫茶スタイル。買ってきた本を開いて、コーヒーをゆったりと飲む。なつかしい雰囲気のなかで楽しい時間を過ごせます。

 これらの店は「集まった」のではなく「残った」といえます。ニッチ・ビジネスを分析した山田英夫の『競争しない競争戦略』ではニッチなレコード盤製造のビジネスを「残存ニッチ」としています。衰退して少しだけ残ったビジネスも事業者が少なければ十分な利益が出ます。

 レトロな喫茶店も飲食店の残存ニッチです。都心に少しだけ残った昔ながらの喫茶店スタイルを楽しめます。詳しくは事例ページをご覧ください。
 
 ほかにもレトロな飲食店が集まる場所があります。東京・新宿西口の「思い出横丁」。「それはション○○横丁のことだろ」とおっしゃる方もいるかもしれません。いまはステキな名前になっています。

 戦後の闇市からはじまった飲食店が約60店。高度成長期の再開発から取り残されました。それが幸いとなり昭和のレトロな飲食店街が有名になりました。21世紀のいま、世界から外国人観光客が押し寄せています。

2.集まることの強み

 ニッチな飲食店が同じ所に集まるとどんな効果(集積効果)があるのかまとめてみます。

(1)集客力が強くなる

 ニッチな飲食店が集まると注目されることが多くなります。メディアが取材に来ます。それによって認知度が広がりお客さまがやってきます。

 また同じニッチな飲食店が集まることで差別化が生まれます。ミャンマー料理店も民族ごとに違う料理を提供しています。そうなると別なミャンマー料理店への来店動機が生まれます。

(2)関連事業者が集まる

 食材などを提供する事業者も集まります。水平的に同業の店が集まるだけではなく垂直的にも集まります。関連グッズやおみやげ品などを扱う店なども出てきます。効率的になり、さらに魅力的な場所になっていきます。

(3)ほかでマネできない

 ミャンマー料理店も、もんじゃ焼き店も、レトロな喫茶店もほかの地域で同じ事業者がやろうとしてもマネができません。数が少ないニッチな飲食店が同じ場所に集まるのは大変だからです。「参入障壁」が高くなります。

まとめ:ニッチな飲食店では「弱い」と思うなら、集まることで巨大な力を生むことを覚えておくべきです。2~3店舗が集まっただけでも大きな力になるはずです。

2022年12月28日掲載 2024年6月25日改稿

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