The marketing for niche restaurants

ニッチな飲食店の戦略:名前で独占する

 ニッチな飲食店は店の名前が重要です。かっこいい名前、おしゃれな名前にしようなどと思わないでください。ニッチな飲食店は店の名前が最終兵器です。

1.ニッチな飲食店の名前の強み

 たとえば川崎・新百合ヶ丘の「生姜料理 しょうが」です。この名前で料理のカテゴリーがわかります。さらに食材そのものの名前。わかりやすい、覚えやすい名前です。
  
 店の名前がとても重要である理由がいくつかあります。

(1)「独自」を占有できる

 ニッチな飲食店でも急に人気になることもあります。経営者の方が一生懸命仕事したから。料理がおいしいから。お客さまの支持が大きいから…。

 そうなるとすぐに追随する店、マネする店が登場します。飲食店ビジネスに倫理規定や道義はありません。それがいい所でもあるのですが。しっかりとマネして、さらに資金を投入して店の規模と店舗数を拡大してしまえば、やったもの勝ちです。元祖で本家のニッチな飲食店は負けてしまいます。

 負けないためには店の名前です。どんな強力なライバルでも名前まではマネできません。名前がカテゴリーを代表する名前になっていれば独自の地位(ポジション)を守ることができます。

 「生姜料理 しょうが」。この名前を追い抜いてカテゴリーの代表になるのは大変です。マネしようと思っても先にこの名前があると「いやぁ、やりにくい」と思うはずです。

(2)金のかからない広告

 ニッチな飲食店は広告するほどお金がありません。広告するお金があったら別のことに使うべきです。広告はやめたら元にもどってしまいます。広告代理店出身の私が言っています。

 店の名前は「食べログ」に掲載するだけで知ってもらえます。広告になります。わかりやすい名前なら表のカンバンに店の名前が出ているだけで覚えてもらうことができます。

 いい名前なら広告費を使わなくても、お客さまの心のなかに広告することができます。しっかりとポジショニングされることになります。

 名前を考えることは「ネーミング」ともいいます。食品、飲料、クルマなど多くの企業がネーミングに莫大な労力と費用をかけています。

 ネーミングは大企業よりもニッチな飲食店のほうが重要だと思います。大企業のように広告ができないからです。

(3)覚えられない名前の店に二度目のお客さまは来ない

 おしゃれでかっこいいフランス語の名前。難しくて読めない漢字の名前。店の名前はステキだけど覚えることができません。

 覚えていない名前の店を、いつか思い出すことがあるのでしょうか。身も凍る恐ろしいサービスの店なら覚えているかもしれません。しかし「おいしい店」や「いい接客の店」くらいでは次の店に行ったら忘れてしまいます。忘れて思い出せないなら店に二度と行けません。

 記憶されるためには、どんな店なのかがしっかりわかる名前が必要です。ニッチな飲食店に名前をつけるときは、よく考えましょう。ニッチのコンセプトの絞り込みにもなります。

2.ニッチな飲食店のいい名前事例

(1)しょうが料理 しょうが

 前述の店です。店名だけでなく情報(コンテンツ)なども充実しています。ニッチな飲食店の成功例だと思います。詳しくはブログでも紹介していますので参考にしてください。

(2)筋肉食堂

 筋トレが好きな人のレストランです。この名前なら説明なしでわかります。高タンパク、低カロリーの食事で筋肉をたくましくします。想像どおり「鶏のムネ肉」のソテーなどが出てきます。

(3)東京アスリート食堂

 スポーツをする人(アスリート)のためのレストラン。売り物はスポーツ栄養学に基づいた「一汁一飯三主菜。美と健康のバランス定食」。会計レシートには食事のカロリー、タンパク質、食物繊維など8項目の摂取量が1日分の目安とともにプリントされてきます。

(4)日本橋だし場

 かつおぶしの「にんべん」が運営するレストラン。かつおぶしの出汁(だし)を使ったメニューを提供しています。「だし場」は少しわかりにくいかもしれません。しかし、にんべん→かつおぶし→だしと連想できます。一度わかると忘れないと思います。

(5)帆帆魯肉飯(ファンファンルーローハン)

 台湾の名物料理「魯肉飯」の専門店。ごはんの上に甘辛く煮込んだ豚肉とゆでたまごが乗ってきます。将来、大型の外食チェーン店として日本やアジアを席捲しそうな堂々とした名前です。

(6)発酵デパートメント

 「腸活」で人気の発酵食品。注目度は年ごとに高まっています。「発酵デパートメント」は食事だけでなく全国各地の発酵食品も販売しています。さらに発酵に関する書籍まで販売しています。まさに発酵のデパートメントです。

(7)マッシュルームトーキョー

 マッシュルーム料理の専門店。名前=食材。わかりやすいです。西洋食材のマッシュルームは生でも食べられます。この店では、まだ日本人が知らない食べ方、新しいメニュー、情報(コンテンツ)に出会えます。こちらもニッチな飲食店の成功事例だと思います。
   
 まだほかにもあります。でもみなさんよく考えられています。一方で「あぁもったいない!」と思う店名もたくさん見かけます。名前は一度つけてしまうと変更は大変です。名前は大切です。よく考えましょう。

「生姜料理 しょうが」「筋肉食堂」「帆帆魯肉飯」「発酵デパートメント」
「生姜料理 しょうが」「筋肉食堂」「帆帆魯肉飯」「発酵デパートメント」

2022年12月28日掲載 2024年6月27日改稿

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