The marketing for niche restaurants

ニッチな飲食店の戦略:コンテンツ・マーケティング

 ニッチな飲食店はニッチです。そのままではだれも気がついてくれません。どうしたらニッチな飲食店のことを知ってもらえるか。どうしたらニッチな飲食店の価値を伝えられるかです。
 
知りたい、興味をひく、面白い、珍しい記事や情報。コンテンツです。これをニッチが好きなお客さまに独自の情報として提供することです。これをコンテンツ・マーケティングといいます。

1.ニッチな飲食店だからこそ情報提供

(1)お客さまは必死でニッチを探している

 「ニッチ」について知りたい人は、本気で情報を探しています。まずはネットで検索、検索、検索ですね。広告ページを飛ばし、信用できそうなページを探し、正直そうなブログのコメントを読み、情報を吟味します。
  
 世の中の2.5%が「イノベーター」といわれる人です。この人たちもニッチな情報を探しています。前述しました。新しいものはないか、面白そうなものはないか、珍しいものはないかと検索しています。
  
 ありふれた記事、どこかで見たような情報は必要ではありません。「あ!」「え?」「おぉ」。発見や驚き、役に立つもの(コンテンツ)がニッチ好きの人やイノベーターの目にとまります。

(2)ニッチな飲食店はニッチな情報をもっている

 ニッチな飲食店には面白くて珍しい情報(コンテンツ)があります。ニッチだからです。ニッチが好きなお客さまに役立つ情報をもっています。

 ニッチに関する情報をネットで探している人だけが、ニッチな飲食店の情報に気がつきます。価値ある記事なら、お客さまが探しだしてくれます。ニッチな飲食店はネットで検索されることが命です。

 ネットの情報を充実させることが最優先です。ターゲットは明快です。ニッチが好きな人とイノベーター。口コミもしてくれます。ニッチな言葉なら検索でも上位にでてきます。

 店から情報を出すことには、さらにメリットがあります。お客さまは、はじめての店なら店にどんな人がいるか心配です。ましてやニッチな飲食店なので、なにが出てくるか少しコワイと感じます。

 店の様子、メニューや価格、シェフなどの情報をネットに掲載します。事前に十分な情報があれば、恐怖心はなくなり安心して店に入れます。

(3)ニッチな飲食店は広告しない

 ニッチな飲食店のお客さまは広い所に散らばって存在しています。大きな公園に小さな紙コップ10個がバラバラに置いてあるようなものです。ニッチな飲食店を知らせるためには、その紙コップにもれなく水をそそぐような作業をしなければなりません。この作業は広告ではできません。
   
 ニッチな飲食店は広告をしません。なのでニッチな情報は店の広告としての情報ではありません。お客さまの役に立つ情報です。
  
 ネットを使えばお金もそれほどかかりません。役にたつ、面白い、珍しい情報を提供すること。これで、お客さまがみずからニッチな飲食店を探し出してくれます。

2.ニッチな飲食店のコンテンツ・マーケティングの方法

(1)店のホームページ(Webサイト)をしっかりと

 店のホームページを充実させることです。「ホームページは、あればいい」。以前はアリバイのようなものと思われていました。「あるけどつくったときのまま」ということはありませんか。
   
 一般の店ならそれでもいいのですが、ニッチな飲食店でホームページの充実が必須です。できればサイトを自分で更新できるようにしておくことが大切です。
  
 かつては、ホームページの制作に大きな費用がかかりました。しかし、いまはWordPress(ワードプレス)など無料アプリでどんどんつくれる時代です。本格的なサイトでも費用はわずかです。
     
 ニッチな飲食店のホームページは専門性があることから信頼性の高い情報源になります。必ず効果を生むはずです。
  
 ネットならSNSもあります。フェイスブック、Twitter、インスタグラム…。大切だと思いますが2024年現在、かつてほど高い価値があうように思えません。
 
 SNSはアップすると川に落ちた葉っぱのように流れていってしまいます。ホームページの記事のように後から検索ができません。手間(時間)のわりに効果が薄いと考えます。

(2)ネットの情報を紙にする 

 ネットの情報が充実したら紙の情報にしましょう。お客さまの手元に残る情報は有効です。ニッチな情報であればなおさらです。
   
 メニューブックのなかのコラムやショップカードなどにワンポイント情報として使えます。まとまったらブックレット(小冊子)として渡すこともできます。友だちに話しやすい内容なら口コミ情報になり集客の武器になります。
  
 ニッチな飲食店のコンテンツのお手本の店があります。川崎の新百合ヶ丘駅近くにあるしょうが料理の専門店「生姜料理 しょうが」です。

 お店は「しょうが専門」というニッチに絞り込んでいます。スタッフのTシャツの背中にはしょうがの効能がズラリと書かれています。なんだか楽しくなってしまいます。

 さらにオーナーが書いたレシピ本が何冊も出版されています。しょうがのレシピや話題でいっぱい。ニッチな情報です。本を手にしたら、お客さまが来店するはずです。

(3)時間をかける

 コンテンツ・マーケティングは効果が出るまで時間がかかります。役に立つニッチの情報で記事をつくるのは大変です。さらに掲載しても即効性がありません。しかし、投入した時間と労力は無駄にはなりません。信じて続けるのみです。
  
 筆者が支援している店ではコロナ禍のあいだ、約2年かけてホームページの記事を大幅に増やしました。そのうちにフリーペーパー、ネットメディア、雑誌社から声がかかり記事が出るようになりました。やがてテレビの番組にも紹介されるようになりました。これらによってお客さまも増えてきました。

 ニッチに関する情報を徹底して収集し、ホームページでお客さまに提供する。これがお客さまを集めることにつながります。ニッチだからこそできることです。

コンテンツづくりは大変です。徳川家康はこう言っています。「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず」。徳川家康では重すぎですか。「千里の道も一歩から」ぐらいにしておきましょうか。

まとめ:ニッチな飲食店のニッチな情報をお客さまに提供しましょう。ニッチな情報があれば、お客さまの関心が集まり、お客さまが来店します。情報はつくるのに時間がかかります。しかしどこかでお客さまに気づいてもらえます。お客さまのほうから店に来てくれます。

<参考文献>
コンテンツコミュニケーション・ラボ『コンテンツマーケティングの教科書』日経BPコンサルティング 2016
宗像 淳、亀山 將『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本 人気講師が教える宣伝せずに売れる仕組み作り』インプレス 2015

2022年12月28日掲載 2024年6月21日改稿

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