寒いですね。はくさいとキャベツが安いようです。ジャガイモはちょっと高くなりそうですね。それで気が付きました。ニッチな飲食店にはひとつの食材に絞った飲食店もあります。それをもう一歩進めて「食材の機能性」を伝えることでさらに人気店になれるはずです。

●意外に多い?ひとつの食材をテーマにした飲食店

 ひとつの食材をテーマにした飲食店は意外とたくさんあります。すぐに思いつくのはうなぎ屋ですね。最近はうなぎの不漁でご無沙汰しております。フグや本マグロ、神戸牛などの牛肉専門店などもよく見かけます。こちらは不漁ではなく昔からご縁がありません。
   
 これら以外に野菜、キノコ、フルーツなどのさまざまな専門飲食店もあります。ひとつの調味料のお店もあります。ニッチな飲食店です。
  
 なぜひとつの食材に絞るのか、です。「おいしい料理で差別化」だと思います。差別化とは、ほかのお店との競争に打ち勝つことです。しかし、競争は大変です。
  
 これらの専門店を当企画室が提案する分析方法、「顧客の限定性」と「市場の成長性」で見てみます。
  
 たとえばアボカド。「アボカドがないと生きていけないわ」と言う人もいるかもしれません。しかし、ユーカリの木から降ろされたコアラや笹の葉がおあずけになったパンダとは違いますよね。「このお店でアボカド…」がダメなら、ほかのお店で別のおいしいものでもいいわけです。つまり、顧客は限定されません。
   
 市場の成長性とは需要です。人気食材になるのかということです。食べ物について人類は保守的です。急に新しいものをたくさん食べるということはありません。危険ですから。
   
 タピオカ(ミルクティー)のような人気食材もありました。しかし、流行と考えられます。アボカドは着実に日本のキッチンに浸透してきています。それでも急激に人気になっているほどではありません。つまり、ひとつの食材の市場性が急に膨らむことはあまりありません。
    
 お客さまもはっきりしない、市場も伸びない。さて、どうやって人気店にするかです。

ひとつの食材の専門飲食店の例
●飲食店ビジネスでも健康を。「機能性表示食品」は急成長

 健康食品は人気です。最近、スーパーなどで目立っているのは機能性表示食品です。ヨーグルトや野菜ジュースなどのパッケージによく表示されています。単なる食品である健康食品よりも健康に関する機能があります。
   
 健康食品のなかで効能を伝えられる機能性表示食品などの「保険機能食品」では、なにを訴求しているかという調査があります。およそ6割の商品が整腸効果と生活習慣病予防に集中しています。
   
 生活習慣病予防。これは高血圧、脂質異常症、糖尿病などの病気です。健康的な食生活が大切です。しかし、これも実際には難しいことですね。甘いものやお酒の誘惑には負けてしまいます。この難題を解決しますという機能性表示食品がたくさんあるということです。
  
 もうひとつの整腸効果というのは、お通じのことです。年齢があがると便秘に悩む人が多くなります。「気にしないで」とお医者さんに言われても気になります。食物繊維が効果的と言われています。厚生労働省では1日あたり男性は21g、女性は18gの摂取をすすめています。しかし、これを維持するのはなかなか大変です。なので機能性表示食品。これで改善したいと思っている人がたくさんいるということです。
    
 いずれにしろ、健康改善のためには食事が大切です。お通じも生活習慣病予防も、たっぷりの野菜をとるなどの健康的な食事をするのが基本です。健康的な食事は家庭でもできますが、外出先の飲食店でもできます。飲食店ビジネスでは、ここがあまり注目されていません。

●危ない「フードファディズム」。食事が習慣化できれば効果

 フードファディズムという言葉をご存じでしょうか。フードファディズムは栄養学が専門の群馬大学名誉教授の高橋久仁子が提起しました。「食物や栄養が健康や病気に与える影響を過大に評価したり信じること」(『「健康食品」ウソ・ホント』)としています。
  
 「納豆で健康になる」など、かつてのテレビ番組で盛んに使われて問題になった手法です。効能のある食材でも、少し食べただけですぐに効果があるということはありません。さすがに多くの人はもうわかっていると思います。
  

 しかし、習慣的にその食材を食べるとなると効果は期待できます。その期待できる食材のメニューを出す飲食店になること。それが「ひとつの野菜の機能性に特化するレストラン」になることです。
 そこにいつも来店していただくことになれば、それはつまり固定客化です。飲食店ビジネスで最も重要なマーケティング施策です。


   
 健康への効果が期待できる食材の多くは野菜です。「野菜類を1日350g以上食べましょう」。厚生労働省が推奨しています。量だけでなく、特定の野菜をいつも食べることによって、お通じの改善や生活習慣病の予防が期待できるはずです。
   
 当企画室が期待できる食材と考えるのは、ごぼう、ブロッコリー、わかめです。理由は食物繊維です。ゴボウには可食部100gの中に食物繊維が5.7g含まれています。ブロッコリーには4.4g。海藻のわかめには3.6gが含まれています(「七訂食品成分表」)。
    
 食物繊維は多くの人が注目する栄養素です。ここに焦点をあてるべきです。これらの野菜・海藻を専門に、フードファディズムに注意しながら、お客さまに継続的に利用してもらえる飲食店が近いうちに出現するはずです。

●事例と4Pで考える「ひとつの野菜レストラン」のポイント

 ひとつの食材で「おいしい」だけでなく、もう一つ先の機能性を訴求したレストランとなるためにはいくつかのポイントがあります。お店の事例とマーケティング要素である4つのPで考えてみます。

①製品(Product)

●メニューの提案:川崎・新百合丘の「生姜料理 しょうが」。生姜専門の飲食店です。つぎつぎと登場する独自で多彩な生姜メニューで人気となっています。新しいメニューがでれば、お客さまの「また行ってみたい」につながるはずです。
   
●関連販売の強化:新宿・初台の「カンテンパパcafé」。食物繊維が多いカンテンの専門店。カンテンメーカーの直営店です。お客さまは帰りがけにレジ横の販売店からカンテン商品を買って帰ります。売上への貢献は大きいはずです。

②価格(Price)

●適切な価格設定:飲食店ビジネスでは価格競争になりがちです。ひとつの食材に特化した飲食店ならばニッチです。まわりのお店の価格にあわせる必要はありません。値引きなどで競争してはいけません。「安い食材を使っているのか」と、かえって信用を失ってしまいます。

③チャネル(Place)

●そのものを店の名前に:「生姜料理 しょうが」。ズバリの名前です。これが重要です。お客さまにとって、わかりやすい、覚えやすい名前が必要です。ほかのお店が「このビジネス儲かりそう」と思って追いかけても、この名前には勝てません。

④プロモーション(Promotion)

●確かな健康情報の提供:ヘルスメーターのタニタが運営する大手町の「タニタ食堂」。コロナ禍で休止していますが、体組成計での計測と管理栄養士によるカウンセリングサービスがありました。健康への機能性を伝える以上、正しく適切な情報を伝える工夫が必要です。
   
●明るく健康的なイメージ:健康訴求だけがメインになってしまうと、食事としてのおいしさや楽しさに欠けてしまいます。食べることは本来楽しいことです。明るく清潔で楽しいイメージを伝えたいですね。

 ここまで書いたらスッキリしました。自分の書いた記事に自己満足?いえいえ違います。さっきお通じがあったからです……。お食事中の方、すいません。

<参考文献>
高橋久仁子『「健康食品」ウソ・ホント』講談社ブルーバックス 2016年