いきなり堅いタイトルですね。こうなったら「渋谷道玄坂の台湾料理店で腸詰め食いたいなぁと思っただけ」なんて言いにくくなっちゃいました。
 台湾料理店はもはやおなじみです。新しい飲食店とかニッチな飲食店とは思えませんね。でも台湾料理店はこれまで以上に発展し、成長するはずです。集中的に出店するドミナント型戦略に可能性があります。

●これからさらに強まる日本と台湾との関係

 親日的ですね。台湾からは東日本大震災のときに莫大な支援をいただきました。アニメやアイドルなど日本の文化にも好意的です。かつて日清戦争(1894年~1895年)によって1945年の終戦まで日本が統治した時代もありました。
  
 少し前には日本の「シャープ」を台湾企業「鴻海(ホンハイ:鴻海精密工業)」が買収し救済しました。最近では台湾の半導体メーカー「TSMC」が日本に進出することになり話題になりました。また、昨今では中国との緊張関係が高まっていて毎日のようにニュースに登場しています。
  
 データで台湾を見てみましょう。日本と比較するとわかりやすいかもしれません。面積は九州よりも少し小さく、人口は約2,360万人。東京都(約1,400万人)と神奈川県(約920万人)をあわせたほどの人口です。九州・沖縄の8県では約1,250万人。台湾の人口密度の高さがわかります。
   
 ひとりあたりのGDPは2万8,371ドル。日本は4万146ドルです。そして外貨準備高。日本は1兆3,443億ドル(世界2位)、台湾は5299憶ドル。この数字、石油大国ロシアに次ぐ世界第5位にあたる立派な成績です。実質経済成長率もコロナ禍であっても3%前後で推移しています。日本は残念ながらマイナス4.8%でした。経済の実力は敬服すべきものがあります。台湾はこれからさらに成長が見込まれます*。
  
 中国と政治的な緊張関係があります。その影響で日本やアメリカとの関係性が重要視されています。これからも日本との関係には大きな重点がおかれるものと思います。
  
*データ出典:JETRO日本貿易振興会 2021年データ

●台湾料理の魅力。世界を魅了するハイレベルの料理とベジタリアン料理

 さて、少し遠回りしてしまいましたが台湾料理についてです。タピオカミルクティー発祥の地。「台湾と言ったらコレ」ですか。まだまだありますね。日本人観光客が好きな「小籠包」や「肉粽(台湾風ちまき)」などもありますね。最近では「魯肉飯(ルーローハン)」も有名になってきました。
 
 台湾には、もともと住んでいた人たちと1949年の中華人民共和国の成立とともに中国本土から移ってきた人たちがいます。これによって食文化も多様化しました。
 
 台湾料理は海峡をはさんだ福建料理の影響を受けています。また、台湾に移ってきた人たちがもちこんだ中華料理は世界三大料理のひとつ。4,000年の歴史があります。広い中国大陸に8つの料理体系があるとも言われています。さらに日本統治時代に広まった日本料理の影響もあります。
  
 多くの東洋料理の文化が集まって高いレベルの料理になっています。世界の観光客には日本の料理も人気ですが、台湾料理の人気は群を抜いています。料理の実力も世界トップクラスです。

●これからの時代に必要なベジタリアン食「台湾素食」の魅力

 注目すべき点は台湾のベジタリアンです。台湾人の約14%がベジタリアンです。世界でもっともベジタリアンが多いのはインドで約28%。これに次ぐ比率です。ちなみに日本のベジタリアンは4%。少なくもなく多くもない状況です*。
   
 世界のベジタリアンの人口は約6.3億人。毎年約1%増加しています。気候変動の問題などから大きなトレンドになっています。これから先、「ときどきベジタリアン」という人も増えるはずです*。これからの時代にベジタリアン食の技術が必要になってきます。
   
 台湾のベジタリアン料理は「台湾素食」として世界で知られています。海外からの観光客もこれを目当てに訪れる人も多いようです。台湾料理にはベジタリアンのためのメニューが多い。ここが魅力です。
   
*国土交通省観光庁 2018年

●ドミナント型出店による成功のチャンス

 つまり、台湾料理店がこれから成長する理由は三つ。ひとつは台湾と日本の関係性がさらに深まること。もう一つは世界から評価される台湾料理のおいしさ。最後は台湾料理なら世界的に高まるベジタリアンの需要をつかむことができるからです。
   
 提案はドミナント型出店戦略です。狭い地域に集中的に出店する戦略のことです。高田馬場のミャンマー料理店がそうでした。ここは自然発生的なものでした。もっと大きなビジネスで言えばセブン‐イレブンの出店戦略です。
   
 このドミナント型出店戦略のよさは認知度が高くなることです。まとまっていることで大きく見えます。メディアに取り上げられることも増えるはずです。
  
 さらに近所の台湾料理店と差別化するために、それぞれのお店が工夫することになります。特色あるお店が生まれ、それが「今度はあの店に行きたいね」という地域内での再来店につながります。さらに食材の供給などのサプライチェーンも効率的になります。
 
 また同じ出身地の人びとが集まることで、精神的にも物理的にも大きな効果が生まれます。仏教という宗教的な共通言語をもつことも強みです。これを中心点としてドミナント型出店戦略で多くのお客さまを引きつける台湾料理店群が、東京のどこかにできると予測します。
   
  
 いかがでしょうか。台湾料理店の成長の可能性をご理解いただけましたでしょうか。書いているうちに、渋谷の台湾料理店のダイコンモチも食べたくなってきました。ここでお開きにさせてください。

ドミナント型ニッチ飲食店