ついに行きました。以前から注目していた忍者レストラン「NINJA AKASA(ニンジャ アカサカ)」。コロナの騒動が終われば復活と成長は間違いありません。忍者レストランの顧客は外国人観光客。これから外国人観光客は増加します。このカテゴリーは成長するニッチ・ビジネスです。

●あれれ、想像とは違う。「忍者キュイジーヌ」だ

 忍者エンタテインメントがいっぱいです。だいたい入り口がわかりません。黒くて長~い塀に、小~さなドアがひとつ。「手裏剣(呼び鈴)押してね」のコメントがあるだけです。「ここなの?」と不安になるのは必定。勇気を出して呼び鈴を押して、しばらくすると忍者のお兄さんが登場します。

 案内されて店内に入ると、そこは真っ暗。手探りで歩きます。掛け声でドアがあいたり、吊り橋が降りてきたり。テーブルにつくまでが一大アトラクションです。

 ヤンチャなお店のつくりと違っているのは料理です。「忍者の兵糧丸のような料理」という想像とは、かけ離れた繊細で洗練された料理ばかり。忍術的なカラクリもありながら日本と世界の料理をモダンにアレンジしています。これなら「忍者キュイジーヌ」と言っていいですね。

 個室のカベには大きなペイントのサインがあります。フェラン・アドリアのサインです。世界一予約のとれないレストラン「エル・ブリ」のシェフです。料理を泡状にする「エスプーマ」の開発者。天才シェフと呼ばれています。お店の方の説明によると随分と気に入っていただき、「料理は魔法」という言葉とサインをもらったとのこと。でしょうね。

●日本の忍者から世界のNINJYAに

 NINJYAはすでに世界の共通語になっています。
 はじまりはショー・コスギが忍者を熱演した1981年のアメリカ映画「燃えよNINJA」。その後、亀の忍者「ミュータント・タートルズ(ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ)」やアメリカ人作家による「ニンジャスレイヤー」などさまざまなNINJYAコンテンツが登場。日本の忍者アニメ「NARUTO」が世界的な人気を獲得したこともあり、NINJYAが世界で定着したようです。

 派手なアクション、特殊な武器、神話的な精神世界などが人気の要因でしょうか。もはや伊賀・甲賀の忍者は日本を離れて、世界のなかでNINJYAというカテゴリーになっています。忍者レストランの人気もここに背景があるようです。

●観光立国は文化と食事で成長する

 イギリス人アナリストで『新・観光立国論』の著者、さらに日本政府観光局の顧問でもあるデービッド・アトキンソン。彼が指摘する観光立国の4条件は「気候」「自然」「文化」「食事」です。

 世界でもこの4条件を満たす国は限られています。日本はこの4つの要素がそろっています。観光を主要な産業とすることができるということです。

 訪日観光客数は2013年に1,000万人、2016年に2,000万人を超え、2019年には3,188万人にまで増加しました。コロナ禍でちょっと残念ですが、時間が経過すれば、回復と増加は間違いありません。

 文化と食事。「NINJA AKASA(ニンジャ アカサカ)」は二つの観光条件を満たしています。お客さまは、訪日外国人と欧米からのビジネスエグゼクティブのようです。日本企業による接待も多いと思います。限定された顧客層と成長する市場。これを背景に、コロナ禍以降は再び予約が取りにくいレストランになるはずです。

訪日外国人観光客推移
●妄想「SAMURAIレストラン」「ZENレストラン」

 NINJYAは、すでに世界で市場ができています。日本にはNINJYAだけでなく、まだたくさんの人気コンテンツがあります。SAMURAIやZENもありますね。ここからは私の大好きな妄想の世界です。

 SAMURAI、サムライは忍者とも似ています。根本的に違うのは「城」と結びついていることです。外国人に人気の姫路城のような外観のSAMURAIレストランが思い浮かびます。宿泊つきもいいですね。甲冑をつけたサムライが登場したり、お客さまが将軍や大奥の御台所(みだいどころ・妻)に扮したりなど物語(ストーリー・マーケティング)で構成できそうです。

 もうひとつはZENレストラン。独特の美意識と精神世界であるZENスタイル。日本でのZENや瞑想の経験はいい思い出になるはずです。

 ねらいはビーガン・ベジタリアンです。いまや世界の食の潮流です。人口の数%というニッチですが成長する市場です。エグゼクティブの関心も高いはずです。

 共通して必要なのは高いレベルの料理です。「NINJA AKASA(ニンジャ アカサカ)」のように独自のスタイルで洗練された料理が必要です。観光客が期待するものは文化と食事。これまでのようなすき焼き、寿司、天ぷらのような和食やけんちん汁のような精進料理では満足できないはずです。

国別ベジタリアン比率
●世界を意識した飲食のニッチ・マーケティングを

 欧米を中心にした訪日観光客と外国人ビジネスエグゼクティブ。限定されたお客さまです。しかも観光市場は成長しています。

 さらに成長するためには、お客さまについて研究する必要があります。マーケティングの原則です。これまでの飲食店ビジネスのように固定客化(再来店)が、このお店では期待できません。しかし、口コミ効果が大きいと思います。口コミがあれば新規のお客さまが来ます。また、接待の場合「ウケる」ということでリピートしているかもしれません。

 文化としての情報の提供も必要です。NINJYA、SAMURAI、ZENはよその国ではマネができません。日本国内ではなく国外に向けたビジネス、つまり世界を市場にできる有力なニッチ・ビジネスです。ニッチ・マーケティングでさらに価値を高めることができます。観光立国日本の有力な「武器」になりますね。

 

 忍者と言えば、実は私も忍術が使えるんですよ。「木の葉隠れの術」です。テクニックとしては自分のパジャマの色を家のカーペットと同じ色にすることです。こうすると妻に見つからずにテレビの前で一日中寝ていられるんですよ。