日本人の1~2%に食物アレルギーがあります。困ったことに増加しているようです。世界でも同様のようです。社会的な課題です。解決が必要です。「1~2%の限られた人」ということならニッチな飲食店の出番です。
●アーミッシュにはアレルギー患者がいない
アーミッシュ。キリスト教の伝統的な生活を守り続ける人たちです。映画などでご存じの方も多いと思います。この人たちには、現代の人びとが悩まされるアレルギー問題がほぼないようです。動物や土と親しむ生活が要因とも言われています。
アレルギーの原因は、はっきりとわかっていません。現代の過度に清潔な環境によるものではないかという「衛生仮説」もあります。いやいや腸内細菌が…とか、ビタミンDではないか…などとまだわかっていないことも多いようです。
●ますます増える食物アレルギーのある人
東京都は3歳児のアレルギーについて1999年度から5年おきに調査しています。食物アレルギーについては下の図のようになっています。2019年度はやや減少しました。でも、大きな流れでは増加傾向です。
文部科学省が2013年に行った調査によると、食物アレルギーの有症者は小学生で4.5%、中学生で4.8%、高校生で4.5%となっています。
厚生労働省は、食物アレルギーについてWebサイトで以下のように発表しています。
「我が国における食物アレルギー体質をもつ方の正確な人数は把握できていませんが、全人口の1~2%(乳児に限定すると約10%)の方々が何らかの食物アレルギーを持っているものと考えられています。」
子どもの食物アレルギーは大人になっていくと減少していくことがわかっています。一方で18歳を過ぎてから食物アレルギーと診断される人も増えているようです。これについては正確な調査がありません。アメリカでは大人で食物アレルギーの人が1割ぐらいいるという情報もあります。世界中でアレルギーは困った問題になっています。詳しくは別記します*。
●飲食店のお客さまが減る。ならばニッチな飲食店の出番です
食物アレルギーの人が増えるのなら、ちょっと考える必要があります。お客さまが減ってしまうからです。食物アレルギーの人は外での食事が難しくなります。飲食店のお客さまが減少するということになりますね。人口減少やコロナ禍もあります。そこにきて食物アレルギーでお客さまがさらに減ってしまうとは。困っちゃいますね。
でも、ピンチはチャンスです。数%の食物アレルギーのある人がターゲットならばニッチな飲食店の出番です。社会課題の解決は新しいビジネスの機会です。
●食物アレルギーのもとになる食品の表示ができるか
食物アレルギーのもととなる食品は数多くあります。加工食品などではパッケージでの食品表示が義務化されています。スーパーなどで買い物をする人はこれで見て確認します。
しかし、外食産業にはこの基準がありません。飲食店で、ここまで表示できるお店は大手の外食チェーン店ぐらいでしょう。食物アレルギーが深刻な問題でも、一般のお店ではここまで細かく対応ができないからです。食物アレルギーのある人たちは、リスクを感じながら食事をするか、外食をあきらめるかです。
●そのアイデアでいきましょう。持ち込みOKでなじみの店になる
朝日新聞(2021年3月18日)にこんな記事がありました。食物アレルギーのある中学生、藤本真己(まこと)さんのアイデアです。「自分でつくった食事をお店に持ち込めるようにする。テーブルにフラッグを立ててアレルギーがあることを周囲にわかってもらう。お店はステッカーなどで食物アレルギーの人を歓迎すると知らせる」などです。すばらしいアイデアです。
飲食店として難しいアレルギー食品を除くなどの対応はしない。でも、持ち込みをOKにして食物アレルギーのある人を歓迎する。「食物アレルギー専門の飲食店」。ニッチな飲食店です。
「飲食店に自分の食事を持ち込みのはありえない」でしょうか。しかし、家族や友人は食物アレルギーのある人といっしょに食事をしたいと思っています。いっしょに来店するお客さまが増えるならビジネスチャンスです。食物アレルギーのある人は、おそらくこのお店を「いつものお店」にしてくれるはずです。「固定客をつかむ」はビジネスの必勝戦略です。
アレルギーに関する研究が進んでいます。次々と情報もでてきています。食物アレルギーの専門店であれば、お客さま同士の交流もできるはずです。価値あるお店にもなるはずです。
社会で困っている食物アレルギーの問題に応えること。ニッチな飲食店のビジネスチャンスでもあります。
●私もアーミッシュ?
アーミッシュは17世紀末、ドイツでキリストの教えを厳格に保とうとする指導者ヤコブ・アマンから生まれたようです。アーミッシュはアマンという名前からですね。アマン……私の名前アメミヤです。私、ニッチ教の狂信者です。しかも厳格です。…明日から私もアーミッシュです。
<参考文献>
ケアリー・ナドー&スローン・バーネット『食物アレルギー克服プログラム』CCCメディアハウス 2021
NHKスペシャル取材班『アレルギー医療革命』文藝春秋 2016
*『食物アレルギー克服プログラム』によると、ヨーロッパ8か国(スイス、スペイン、オランダ、ポーランド、ブルガリア、ギリシャ、アイスランド、リトアニア)の調査では食物アレルギーの症状を訴えた人は4.4%。ドイツでは17歳までの739人の食物経口負荷試験で26人(約3.5%)。オーストラリアでは同じく食物経口負荷試験で生後12か月までの子ども2,848人のうち280人(約9.8%)が食物アレルギーとなっています。