女性シェフがまだ少ないようです。アイデアですが、アイドルシェフから入るという方法があると思います。ライブの時代だからです。しかし、カンタンではなさそうです。まずはニッチな飲食店からですね。

1.ジェンダー平等が遅れているのは政界だけか

 女性は話が長いと発言した東京五輪組織委の森元会長。この発言、日本社会へのインパクトがありましたね。ジェンダー(社会的な男女)への関心が一気に高まりました。


 先日は世界経済フォーラム(WEF)が「ジェンダーギャップ(男女格差)リポート」を公表。日本は156カ国中120位でした。こちらも「痛い」ぐらいの順位ですね。特に政治での遅れが問題のようです。


 しかし、政界だけでなく飲食店ビジネスでも女性の活躍はまだまだです。シェフや板前といえば、ほとんどが男性です。フランスでも女性の三ツ星シェフは現在一人だけ。通算でも4人目とのこと。飲食店ビジネスではフランスでもまだまだのようです。

2.「アイドルシェフレストラン」の可能性はあるのか

 これから女性シェフの活躍を期待したいところです。そこで提案ですが、「アイドルシェフレストラン」はどうでしょうか。「ももクロ」(仮:お好きなアイドルで想定してください)のような女性シェフがアイドルとして活躍するレストランです。


 突飛なアイデアでしょうか。「邪道だ」との意見も出てきそうです。しかし、マーケティングとして考えるとそうでもありません。


 男性は飲食店の大事なお客さまです。若い男性はアイドルを愛する層です。「ももクロ」が活躍する音楽産業の市場規模は約1兆4,000億円。大きなビジネスです。長期的に伸び悩む外食産業に比べると期待できる市場です。

 「アイドルシェフレストラン」として、この市場にチャレンジすることになれば、飲食の新しいビジネス機会になります。ただし、これまでの飲食店ビジネスの常識とは一線を画す必要があります。


 「アイドルシェフレストラン」とはどのようなものかについて比較表をつくってみました。「ももクロ」、「アイドルシェフ」、「ミシュランのシェフ」の3つの比較です。

ももクロ、アイドルシェフ、ミシュランのシェフの比較表

3.ライブのエンターテインメントとして

 なんだか「ありそう」な感じですが、そんなにうまくいくはずはありません。飲食店は席数が限られています。アイドルビジネスのように、楽曲や動画をデジタル商品として際限なく売ることはできません。コンサートのように大きな会場にファンを集めることもできません。がんばっても利益がでない、儲けが薄いビジネスになるはずです。


 しかし、少し光があります。音楽産業のようなコンテンツビジネスで、いま伸びてきているのがライブエンターテインメントビジネスです。コロナ禍で2020年は少し違うかもしれませんが、大きな流れでは変わらないと思います。

 デジタル化の反動として、直に触れあうことができる「ライブ」の価値が高まったのです。ライブ市場の成長は、図のように10年で2倍になっています。ここに「アイドルシェフレストラン」カテゴリーとして参入できればビジネスチャンスです。

ライブエンターテイメントの市場規模

4.ニッチな飲食店としての3つの重要ポイント

 新しいビジネスとして、うまく進めていくポイントは、おもに3つあると考えます。


 ひとつは「商材」です。つまり、アイドルのキャラクターづくりです。コンセプトでありブランドでもあります。レストランですが、求めるものは調理技術ではなく世界観です。提供されるメニューが、アイドルの世界を表現(デザイン)するものであることです。


 二つめは、どうやって運営し、エンタメ化するかです。かなり難しそうです。アイドルに楽曲を提供するように、専門のレシピを提供するレシピプランナーが必要です。また、ファンといっしょになってアイドルを育て、マネジメントする敏腕マネージャーも必要です。ベンチャービジネスと同様に「死の谷」と「ダーウィンの海」のような難関があるのだと思います。


 最後にもうひとつ大事なこと。価格戦略です。ほかのお店と同じようなメニューでも同じような価格にはなりません。価格競争に参加してはいけません。また、価格によってブランドのポジションが決まります。低価格にすると価値の低いものと見なされてしまいます。
 「アイドルシェフレストラン」は爆発的な利益が出せないことから、大手が手掛けることはないと思います。ニッチな飲食店になるはずです。どんな価格設定にするかは、ニッチな飲食店経営の最重要ポイントです。

 

 私の妄想のなかでバブルのように浮かび上がった「アイドルシェフレストラン」のアイデア。いつかできると予測しています。いまのところ非現実的。もう少し研究してみる必要がありますね。
 でも、なんだか面白そう、楽しそうですね。ここが大事です。アイドルなので男性も十分アリだと思います。実はいま、歌って踊れて料理ができるメンバー募集中です。私ですか?ちょっと腰とひざと肩が痛くて…。でも、目玉焼きはつくれますよ。

             

参考文献
経済産業省 商務情報政策局『デジタルコンテンツ白書2020』
小島和宏『ももクロ非常識ビジネス学』ワニブックス 2019
山口 周、水野 学『世界観をつくる』朝日新聞出版 2020