キャラクターが大きなビジネスをつくっています。しかし、このなかで飲食店ビジネスは、ほぼゼロです。でも、よく考えてみるともう少し大きなビジネスになりそうです。そのためにはストーリーをつくるクリエーターたちにおいしいものを食べてもらわなければなりません。

●理由は「ガンダム」に染まりきってみたい

 「機動戦士ガンダム(以下「ガンダム」とします)」。アニメの本拠地、秋葉原に「ガンダムカフェ」があります。カフェといっても、レストランエリア、ディナーエリア(Zeon’s Diner Tokyo)、ドリンクコーナー(fortune Latte Café)などがあり、かなりの広さです。予約制ですが、お客さまもほぼ満席に近い状態。「ガンダム」人気は確かなものです。

 メニューは「アムロ専用パイロットランチ」など、すべては「ガンダム」です。大きなスクリーン、キャストのコスチューム、インテリアもすべて「ガンダム」。食べることだけではなく「ガンダム」の世界に染まり、浸りきることの喜びが来店する目的ですね。

●世界のキャラクターランキングでみる「ガンダム」の強さ

 英語版のWikipediaに世界のキャラクタービジネスの売上データが掲載されています。下図をご覧ください。「ポケモン」すごいですね。ダントツのナンバーワンです。「ハローキティー」も続いています。ディズニー関連のキャラクターもさすがです。上位に目白押しです。日本発のキャラクターもたくさんあり、キャラクタービジネスは日本の重要産業なのがわかります。

 このなかで「ガンダム」は「バービー」、「トイストーリー」にはさまれた17位にいます。17位とはいえ、「ガンダム」のトータルの売上高は237億ドル。いまの為替、1ドル110円で換算すると約2兆7,000億円にもなります。スタートが1979年ですから、単純に計算すると年間600億円から700億円の売上額になります。

 バンダイナムコホールディングス(株)の2020年3月期の決算報告でも「機動戦士ガンダム」の売上高は781億円となっています。巨大なビジネスです。販売の中心はプラモデルやコレクターズフィギュアのようなグッズです。いまやおとなになった「ガンダム」ファンが大事なお客さまになっています。

キャラクタービジネス世界売上ランキング
●なぜ、あまり儲かりそうものないレストランがあるのか

 キャラクターレストランは「ガンダム」だけではありません。大阪USJの「ハリーポッター」、「ポケモン」、「アンパンマン」など有名キャラクターのお店にはレストランがあります。ピーターラビットのような少しマイナーなキャラクターにもあります。しかし、キャラクターレストランが行列で大人気、全国展開というようなことはありません。

 「ガンダムカフェ」でも感じましたが、キャラクターレストランはお客さまへのサービス的な事業になっています。大事なキャラクターのグッズを販売するためです。したがって、数字に出てくるような大きなビジネスにはなっていません。今後も大きな成長を期待されているものでもないようです。

 毎年、数百億円も売りあげる大きなコンテンツビジネスのなかで、キャラクターレストランビジネスは未成熟のようです。ニッチな飲食店ですね。

●キャラクターレストランをSWOTで考える

 かんたんですが、SWOT分析で考えます。SWOT分析は、自身のこととしての強み・弱み、社会などの外部のこととしての機会・脅威の4つの面からビジネスを考えるものです。

 ①強みは、なんといっても強固なファン層です。「ガンダム」に関連した飲食では、「ザクとうふ」が2012年に相模屋食料から発売され大ヒット。地味な豆腐業界なので大変な話題になりました。ファンの潜在的な購買力の大きさを見せつけました。しっかりとしたファン層の存在はビジネスにとって魅力的です。

 ②弱みは、飲食につながるイメージが少ないことです。未来社会やロボットアニメのキャラクターと飲食はなかなか結びつきません。ここは後述します。

 ③機会は、前述のようにキャラクタービジネスの市場の大きさです。ここに飲食ビジネスが食い込む余地は十分にあると思います。

 ④脅威は、人気の浮き沈み。みんなが「大好き」といったのに、あっという間に消えていってしまったものもたくさんありますね。ここのコントロールは難しいものと思います。

●どうして暗黒の未来食なのか。キャラクターレストランの難題

 ということで、キャラクターレストランの成長には、強固なファン層をつかむこと。そのためには、弱みの克服、つまりキャラクターと飲食のつながりが必要になりそうです。

 SF映画やアニメなどを見ていても、飲食がいいイメージで出てくることがあまりありません。「千と千尋の神隠し」では飲食店で両親が豚になってしまいましたね。「マトリックス」では、流動食のようなものを食べるシーンがシニカルに描かれていました。

 傑作SF映画「ブレードランナー」では、主人公が雨のふりしきるなか、小さな屋台で立ち食いでした。オヤジさんの「ふたつで十分ですよ」という日本語が印象的でしたね。いずれも食べることについて魅力的な世界観が表現されていません。

 キャラクターレストランとして、しっかりとファンを獲得するなら、魅力的でおいしそうな食事にまつわるストーリーの展開が必要です。ストーリーがあることでキャラクターレストランの価値が生まれるはずです。

●未来のキャラクターレストランは、制作する人たちの働き方改革から

 ちょっと暗い、あるいは暗黒の未来であることがつくる側には、やりやすいのかもしれません。また、未来の飲食についてクリエーターたちが直観的に期待をしていないということも考えられます。ちょっと悲しい予測ですが……。

 別な見方として、クリエーターが制作に没頭し、おいしい食事に興味をもつほど時間とおカネに余裕のない生活をしているのかもしれません。過酷なアニメーターたちの話を聞くとそんな推測もできます*。

 SF、ロボットアニメなどのように未来社会をイメージする仕事は大切な仕事のはずです。理想的な未来の食事のシーンがイメージができるような働き方が必要かもしれません。「キャラクタークリエーターの食事のための働き方改革」が未来のキャラクターレストランをつくる方法かもしれません。

*アニメーターの1か月あたりの平均作業時間は231時間、中央値が225時間、最頻値が200時間となっています。法定労働時間では週40時間。月にすると原則160時間ですので、残業が約70時間あります。かなりハードですね。
出典:「アニメーション制作者の実態調査報告書2019」JAniCA (Japan animation Creator Association) 一般社団法人日本アニメーター・演出協会