私のふるさと山梨県、どうやらハラをくくったようです。「ワイン県」宣言をしました。副知事にワインソムリエの田崎真也さんを任命。これからワイン県として名を高めていくようです。ポジショニング戦略です。うまくいくのでしょうか。
1.山梨県なんて知らない
山梨といえば武田信玄にブドウと桃、そして富士山です。でも県外の方は「山梨県って、なんだっけ…」という方も多いはず。かつて、初対面の女性から「山梨県出身なんですか。冬は雪が積もって大変でしょう。…あんまりナマリがありませんね」と言われた思い出があります。それって…同じ山のつく違う県ですよね(^_^)。
人口は約80万人。東京で最も人口の多い世田谷区は約92万人です。少ないです。全国でも下から6番目。それだけではありません。さらに人口減少も進んでいます。
東京や神奈川のように人口の多い都道府県は人口が増加する傾向です。人口の多い県には人が集中。そうでない県は、減少に拍車がかかる。山梨県、このまま減少が続くと存続できないかもしれません。もしかしたら、富士山があるから静岡県と統合…、信玄公のご縁で長野県と一緒に…、親分の東京に吸収…なんて、ありかもですね。それではヤバイ。ということでの宣言かもしれません。
2.甲州ワインでナンバーワンのポジションに
山梨県のワイン生産は全国シェアの31・3%。一番です。生産は1870年、明治3年にはじまりました。かれこれ150年の歴史です。
最近、甲州ワインの評価が高まっています。世界のワインコンクールで多くの賞をとっています。ワイン生活になれていないので詳しくわかりません。しかし、なんだかスゴイようです。しかも、ワインの消費量はデコボコはあるものの、ずっと昇り調子です。
ひとつに絞った。しかも、それをワインにした。この決断、勇気の塊ですね。「信玄公になんと申し上げるのだ」、「世界に誇る葛飾北斎の赤富士があるじゃないか」…いろんな声が聞こえそうです。しかし、これは立派なポジショニング戦略です。
無理やりポジショニングマップをつくってみました。東京をターゲットと考えヨコ軸に、アルコールの価格帯をタテ軸にしました。そこにワイン、日本酒、焼酎などの生産県を置いてみました。こうすると、ヒイキの引き倒しのようですが、山梨県、ダントツのすばらしいポジショニングになります。
ニッチ戦略です。小さな生き物が生き残るために、たったひとつのポジションを独占することです。東京に隣接した小さな県。国産ワインに特化して生産、販売。高級ワインをきっかけに、ブドウや桃、観光、関連する産業へとつながるはずです。ほかの県では追随できません。こうなると独自のポジションはさらに強化されるはずです。
3.先輩「うどん県」は足踏み状態
お手本は「うどん県」の香川県だと思います。香川県は2011年にうどん県宣言。同県出身の要潤(かなめじゅん)さんを副知事に任命しました。かなり話題になったことを覚えています。
香川県は、さぬきうどん以外にも小豆島、弘法大師さん、お遍路もあります。でも、県外の方には、山梨県と同じように「香川県って、なんだっけ」と聞かれそうです。
しかし、「うどん県」はとてもわかりやすい。イメージが伝わります。山あいの小さなうどん店を食べ歩く「うどんお遍路」も手軽なツアーとして人気です。
2011年の宣言以降、どうなったのでしょうか。「地域ブランド調査」(都道府県別魅力度調査:ブランド総合研究所)というのがあります。都道府県の魅力度ランキングを発表しています。毎年、最下位はどこかと物議をかもしています。指標は3つ。「住んでみたいか」、「観光にいってみたいか」、「産品を買ってみたいか」です。
2011年以降をみると、宣言後の2012年に30位から23位に大幅にランクアップしました。しかし、その後、少しづつランクダウン。33~34位あたりが定位置になりました。2020年は24位とランクアップ。2019年に瀬戸内国際芸術祭が開催されました。その影響かもしれません。それでも23位に届きません。
よく調べてみると、うどん県宣言の翌年、2012年に「うどん県。それだけじゃない香川県」宣言を出しています。うどん県はPRの話題だけと割り切ったということでしょうか。公共のための自治体です。うどん業界だけに資源を集中するわけにはいかないのかもしれません。でも、ちょっと残念です。
うどん県宣言以降の低迷は、「だけじゃない」としてブランドを築くことができなかったからだと思います。継続されない戦略ではブランド力は高まらないはずです。
4.「ワイン県」ならブランディングの継続を
山梨県の2020年のブランドランキングは27位。山梨県が本当に「ワイン県」に決めたのなら、揺るがないでほしいと思います。ワインならビジネスとしての広がりがあります。ブランドイメージも良好。ニッチ戦略としてのポジショニングが明快です。
住みたい県、行ってみたい県、買い物したい県になること。ブランドをつくる活動を積みあげていかないとポジションはできません。コンセプトを決める。それを守る。関連する商品を開発する。お客さまとのコミュニケーションを深める。ニッチな飲食店の戦略とまったく同じです。
ポジションを確保するためには活動が必要です。活動を継続しなければなりません。継続によってブランドが築かれます。
酔ったいきおいなら、このまま二日酔いでもいいから酔い続けていただきたい。
えっ?どれだけ飲んでも酔わないタイプですって?う~ん、困った人ですね(^_^)。