マーケティング業界では有名なこの小話。でもネットでこの話を調べてみると、かなり違っていることも多いですね。例えば、こんな話になっています。

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 あるアフリカの国に靴を売りに行ったセールスマンAは、空港に到着するなり本社にこう連絡しました。「この国では靴は売れません。この国では靴を履いている人がいません」。
 ところがセールスマンBは、空港に到着するなり本社にこう連絡しました。「大至急、靴を大量に送ってくれ。この国ではまだ靴を履いている人がいないんだ」。ものごとをポジティブに考えるセールスマンB。がんばって売るBが正しいマーケティングの考え方だ。
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  この話の出典はフィリップ・コトラーの『コトラーの戦略的マーケティング』(ダイヤモンド社刊)だと思います。ここではAもBも間違いです。以下、ちょっと長いのですが、本文から引用させていただきます。

 南太平洋に浮かぶ島に自分たちの市場があるかどうかを検討している香港の製靴メーカーの話がある。

 その島に派遣された受注担当者は、状況をざっと見て、こう電報を寄こした。「ここの人は靴をはいていない。ここには市場はない」。その報告に納得できなかった社長は、営業マンを島に送った。営業マンは、「ここの人々は靴をはいていない。ものすごい市場がある」と電報を打った。残念なことに、この営業マンが圧倒的な数の裸足の人たちを目撃してわれを忘れてしまったため、今度はマーケターが送り込まれた。部族の首長と数人の現地人にインタビューしたこのマーケティングのプロは、こう電報を送信した。

 ここの人々は靴を履いていない。しかしながら、彼らは足に問題を抱えている。私は、靴を履くことで足の問題が防げることを首長に示した。首長はその考えに夢中になっている。部族の人々の70%が一足10ドルの価格で靴を買うだろうと、首長は見ている。初年度、われわれは5000足を販売できる見込みだ。島に靴を運ぶ輸送費と流通経路の整備にかかる費用は一足あたり6ドル。初年度の利益は2万ドルを超える計算になる。われわれが計画している投資額からすると、投資利益率(ROI)は20%となり、通常の15%を上回っている。言うまでもなく、この市場に参入することで、将来手に入る価値は高い。ぜひ参入すべきである。

 この話の冒頭には、「調査はマーケティングの出発点である。調査をせずに市場参入を試みるのは、目が見えないのに市場参入するようなものだ。」ともあります。
 今、市場としてないから根本的にないのかはわかりません。本当にないのか、実はあるのか、調べてみないとわかりません。カンタンに判断するものではありません。事実を確認し、分析し、そこから判断して行動すべきだということですね。マーケティングでいう「調査、セグメント・ターゲティング・ポジショニング(STP)、4P(製品・価格・流通・プロモーション)」ですね。さらに、コトラーはよいマーケティングならば、それによる収益が企業の財務上の目標にかなっているのかまで試算されているものだといっています。

 「結果的には、売るんだからBじゃん!」という方。…まぁ、…そうともいえますね(;^_^A。

南の島で靴を売る