1.ほっとする味噌汁のランチ

味噌汁の専門のレストラン「MISOGEN(みそげん)」。野菜いっぱいのあたたかいお味噌汁にごはん、お漬物などがついたランチいをただきました。昨日の夜、みんなでワインぐびぐび、お肉たっぷりもりもりで、アタマが少しぼーっとするなんてことがあれば、ここがいいと思います。深~い呼吸をしながら、お味噌汁を飲み、つけあわせのお新香と白いごはんを食べるとほっとすると思います。

 東京駅前のKITTE(キッテ)。昔の中央郵便局があったビル。その地下1階。女性中心にランチタイムだけでなく、午後を過ぎても若い方から中高年の方まで多くのお客さまが来ています。二日酔いと思われる男性の方もいらっしゃいますね。

2.かわいいギフト用のインスタント味噌汁

 注目したのは、入り口のレジ横にある商品販売のスペース。「美噌汁最中(みそしるもなか)」という名前でインスタント味噌汁を販売しています。最中の真ん中にかわいい顔がついています。かつて、岡本太郎も「顔があっていいじゃないか」といってましたね。ゆったり、すっきりなど気の利いたコメントもついています。

ギフト用商品もたくさん。「どれどれ」とのぞき込んでいると、外国人観光客もとなりで興味しんしんとばかりにながめています。

 Webサイトを検索すると、東武百貨店や阪神百貨店などに専門販売店「味噌元」があります。オンラインショップもしっかりと出来ています。味噌汁を飲むことは、ココロとカラダにとって大切であることがトップページにていねいに書かれています。こちらKITTEのMISOGENは「味噌元」のアンテナショップのような役割なのだと思います。

3.味噌汁って飲んでいますか

 少し気になるのは「みそ」の販売の動向です。食事の洋風化によって、味噌汁を飲むことが少なくなっている気がします。総務省の家計調査を見てみます(出典:「食生活データ総合統計年報2018」三冬社)。

 日本の世帯人員は減少中。消費支出、つまり税金、社会保障費などを除いたいわゆる生活費も減少しています。しかし、食料支出は最近、増加しています。食品価格が上昇したのか、おいしいものなら高くても買うということなのか、詳しくわかりませんが、確かに増えています。

消費支出・食料支出と世帯人員

 一方、みその支出額は年々減少しています。朝食などは、みなさん、きっと手軽にパンなどで済ませていると思います。確かに、世帯人員の減少にあわせるように、あるいはそれ以上にみその支出金額も減少しています。同じ和食の調味料の代表でもあるしょうゆも少なくなっています。

 であるならば、味噌汁専門のレストランビジネスは厳しい状況ではないでしょうか。

 しかし、よく調べてみると、違うデータも出てきます。お湯をそそぐだけで飲める即席スープの支出金額。世帯人数に反比例するように増加しています。そういえば、CMでもかわいい女性タレントがおいしそうにコーンポタージュスープを飲んでいましたね。同じように手軽にお湯をそそぐだけで食べられるカップ麺の支出金額も増加しています。

みそ・しょうゆ・乾燥スープ・カップ麺消費支出額推移

4.いやいや、しっかりと味噌汁販売は成長しています

 あらためて別の資料(食品マーケティング便覧2016富士経済)でスープ類の販売額推移を確認してみます。

 スープ類全体として成長しています。2007年の販売額は約1,530億円。2020年予測では、1,845億円です。CMに出て来るフリーズドライスープが伸びているのかと思いましたが、それほどではありません。最も大きな販売額で、しかも成長している商品は即席みそ汁でした。意外ですね。

 ここからは推測ですが、スープ類のユーザーは、人口比率として少ない若い人ではなく、団塊世代などボリュームの多い高齢夫婦、あるいは高齢で一人になった人が多く利用しているのかもしれません。
 家庭で味噌汁は作らなくなったけれど、代わりにインスタントの味噌汁を作って飲むという習慣が根付いてきたということ。やっぱり、味噌汁でほっとしたい人が多いのかもしれません。

スープ類販売額推移

5.「お店での販売」はニッチな飲食店で忘れてはいけないこと

 ニッチな飲食店をこれまで、いくつか拝見してきました。そのなかで、物販、つまりお店で商品を販売したり、Webサイトから販売をすることが重要な活動になっていると感じています。
 MISOGENでも、一見して難しいと思われる味噌汁について、即席みそ汁の成長に着目してビジネスを行っています。賢いビジネス。ご明察ですね。

 そんなことを考えていた先日、94歳の伯母のお別れがありました。持って帰った返礼品を自宅で開けてみると、なんと!インスタント味噌汁でした。なるほど。「世の中の人って、よく考えている」と思った次第です。