1.コメダ珈琲店=ファミレス×高級コーヒー
コメダ珈琲店。大人気です。
どうしてなのかを考えるために、
甘いものフリークの同僚と新木場のお店に伺いました。
休日の午後だったのでほぼ満席でした。
でも、とても落ち着いた雰囲気です。
コーヒーもおいしく、人気商品のシロノワールは
ソフトクリームがすごいボリューム。
なるほど人気なわけです。

2.ファミレスのスタバだね、これは…
かわいいブーツグラスにクリームたっぷりのメロンソーダを
飲み、さらにシロノワールもほおばる同僚のひと言。
なるほど、ファミレスに高級コーヒーがプラスということか。
確かに。サンダルでも来られる気安さと
いつまでも居られる心地よさはファミレス。
そこにファミレスにはない高級なコーヒーがあると
考えるとガッテンかもしれません。
(商品写真は珈琲所コメダ珈琲店ホームページより)

コメダ珈琲店

3.コーヒーは高級品から手軽な飲み物の時代に
昭和時代にはコーヒーは喫茶店で300円~400円出して
飲むものだったと記憶しています。
ところが1980年代にセルフサービススタイルの
ドトールコーヒーが出現して一気に変わりました。
低価格でありながら気軽においしいコーヒーが
飲めるようになったのです。
その後、グラフのようにさまざまなコーヒーチェーンが
参入し、現在のような活況となっています。
一方で人のよさそうなおじさんが一杯ずつ淹れてくれる
街のコーヒーショップは長期にわたり減少を続けています。

コーヒーショップ市場規模推移

4.ファミレスからも消えた本格コーヒー
ファミレスでコーヒーを飲むためには、もはや
ドリンクバーでボタンを押して飲むしか方法はないようです。
そのかわりドリンク全てが自由に飲めて
200円~400円程度と「お買い得」です。
1990年代のバブル崩壊後のデフレの中で
ドリンクバーは始まったようです。
かつてはお姉さんがコーヒーサーバーを片手に
「おかわりいかがですか」と声をかけてもらった
ような記憶があります。もはやなつかしい思い出です。
おいしいコーヒーを飲みたい人にとっては、
ファミレスはもはや選択肢には入っていないと思います。
気軽な食事とおいしいコーヒーが飲める場所という
ポジションがすっぽりと空いたわけです。
ここにコメダ珈琲店が入ってきたと推測します。

ファミレスのドリンクバー

5.セブンカフェがコーヒーの嵐をよんだ
マクドナルドの100円のコーヒーは衝撃的でした。
低価格なのにおいしいコーヒーが出てきたと思いました。
しかし、さらに衝撃的だったのは2013年に
販売が始まったセブンカフェ。100円で淹れたてのコーヒーの
持ち帰りができ、しかもおいしい。
私の事務所の近くに仲良く2店並んでいましたが、
マクドナルドが閉店してしまいました。
コーヒーのせいだけではないと思いますが。
セブンカフェはファストフードだけでなく
缶コーヒーにも大きな影響を与えたようです。
グラフにもあるように缶コーヒーの売上額は
2013年を境に低迷しています。
一方、セブンカフェは2018年には年間11億杯に迫ると
予測されています。おいしいコーヒーがさらに
低価格で飲めるようになってきました。

缶コーヒー市場規模推移

6. 増加する日本のコーヒー消費
日本のコーヒー豆の消費量は少しデコボコは
あるものの増加しています。特に2013年以降は
セブンカフェの影響もあるのか顕著な増加です。
また、日本人はポリフェノールなどの健康効果に関心が高く、
コーヒー消費量の増加の要因のひとつではないかと思います。
これに関連してコーヒーではない「カフェイン飲料」の
一時的な多量摂取による死亡事故が2017年に起きたことで
この年の消費が減少したと言われています。
しかし、欧米に比べると消費量はまだ多くはないようです。
今後もまだ成長の余地はあるのかもしれません。
いずれにしろ、コーヒーチェーンやコンビニカフェの活躍で
コーヒーを飲むという文化が日本人にも深まってきました。

日本のコーヒー国内消費量推移と世界の一人あたりの消費量

7.ポジショニングだけではないコメダ珈琲店
「珈琲所コメダ珈琲店」は喫茶店が大好きという名古屋の人が
支持するスタイルで、今や全国に790店舗、
売上高も670億円までに成長しました。
コーヒーを飲むという文化の深まりによって、
安らぎというような付加価値があれば高価格のコーヒーも
受け入れられるようになりました。
ファミレスは食事プラスコーヒーというポジションから
食事プラス低価格ドリンクというポジションに移りました。
この空いたポジションにコメダ珈琲店が入ったと考え、
推定も交えてポジショニングマップを作ってみました。

コメダ珈琲店店舗数と売上高推移


しかし、成長市場とはいえプレーヤーの多いコーヒー市場です。
ポジショニングだけではなく、勝ち抜くための戦略や戦術は
もっと練られたものだと思います。
内装は木をふんだんに使い落ち着いたイメージに。
商品は人気のシロノワールをはじめとする
豊富なパンメニューを提供。
サービスでは一日中でもいられるように
新聞や雑誌を各種取り揃えています。
多くの知恵と工夫が注ぎ込まれて
人気のお店になっているのだと思います。

コーヒーとフードのポジショニングマップ

8.たとえばアルコール+本格コーヒーのビジネス
ポジショニングマップで考えると
新しいコーヒービジネスがある気がします。
一杯ずつていねいに淹れるハンドドリップスタイルが
サードウェーブと呼ばれ、世界中で注目されています。
ハンドドリップであれば500円~1,000円の
高い価格で販売できると思います。
たとえばアルコールとの組み合わせはどうでしょうか。
居酒屋などの料飲店市場はグラフのように
少しずつ減少しています。
そういえば、飲み過ぎてベロベロになっている昭和の
お父さんのような人を見かけなくなりましたね。
しかし、流行りのチョイ飲みのように軽く飲むことには
需要があるようです。
ここで異分野でもあるコーヒーと組み合わせると
新しいコーヒー市場が生まれるかもしれません。
一般的にアルコールを飲ませる店では、コーヒーメニューは
ないか、あっても本格的なものではありません。
高級なワインかウイスキーを少し飲んで、
その後本格的なハンドドリップのコーヒーを飲む。
自分のひとときを楽しんだり、
友人と語り合うことなどもできる「バー&コーヒー」の
ような新ビジネスもあるのではないでしょうか。

などなど…。ポジショニングで考えると
ビジネスチャンスが見えると思います。

居酒屋・ビヤホールの市場規模推移
ワインとコーヒーのポジショニングマップ

<参考資料>
「なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?」 高井尚之著 プレジデント社刊
「ドル箱コーヒー市場争奪戦」eビジネス新書週刊東洋経済
「戦略は『1杯のコーヒー』から学べ」 永井孝尚著 (株)KADOKAWA刊
「Weekly Report」 江南ロータリ―クラブ 2013年11月14日