はじめに

仕事で神楽坂3丁目周辺の26店舗のランチ価格を調査しました。
場所は坂下と坂上のちょうど真ん中あたり。
さすが神楽坂ですね。飲食店のレベルが高いです。
面白いことがたくさんわかったので、あらためてまとめてみました。
私なりの結論ですが、居酒屋さんのランチは、
安いメニューが多すぎるかもしれません。

神楽坂調査地域
1.二つの系統に分類し、メニュー数とランチ価格を調査

前提ですが、26店舗をレストラン系と居酒屋系の二つのカテゴリーに分けました。
夜昼を問わず食事中心のイタリアン、とんかつ、焼肉屋などの
レストラン(以下レストラン系とします)の16店舗と
夜のアルコール販売がメインの和・洋の居酒屋さん(以下居酒屋系とします)
10店舗の二つです。
分類方法は私が店舗の印象で恣意的に決めましたので、
不正確な部分はご容赦ください。
ランチ価格とメニュー数はお店の前のA看板とホームページなどを
見ながらリスト化しました。

お店の前のA看板
2.ランチは1,000円がキメ価格?

レストラン系16店舗で103のランチメニュー、
居酒屋系10店舗で61のランチメニューがありました。
グラフを見ていただくとわかりやすいと思います。
やはりレストラン系が高価格で、居酒屋系がリーズナブルな価格になっています。

レストランのランチ価格帯と居酒屋のランチ価格帯

平均値をとるとレストラン系は1,459円、居酒屋系は1,118円です。
メニュー総数のちょうど真ん中の順番にあたる中央値をみると
レストラン系は103ありましたから52番目で1,200円でした。
居酒屋系は61ありましたから31番目で1,000円でした。
最も多い価格である最頻値でみると
レストラン系で1,000円、居酒屋系も同じく1,000円でした。
居酒屋系では中央値でも1,000円でしたね。
「ランチは1,000円だ!」ということでしょうか。

平均値、中央値、最頻値
3.居酒屋系のランチ価格は2タイプ、レストラン系はなだらか3タイプ

最頻値に次ぐ、2番目にメニュー数の多い価格がちょっと面白いです。
レストラン系は1,500円。ぐっとお高くなっています。
しかも最頻値の1,000円の13よりひとつ少ないだけの12メニュー。
一方、居酒屋系の2番目は900円。ちょっとだけお安くなっています。
こちらも最頻値の1,000円の11メニューよりひとつ少ない10メニュー。

レストランは1,500円、居酒屋は900円

大きな価格帯を見るために、300円単位で切り分けてみます。
レストラン系では900円~1,199円の山、1,200円~1,499円の山、
1,500円以上の山とざっと3つに分かれています。
居酒屋系は900円~1,199円にほぼ集中し、
600円~899円に二つ目の小さな山ができています。
しかし1,200円以上はぷっつりと少なくなっています。

レストランでは1,200円から1800円
4.レストラン系のランチ価格は「極端の回避性」


レストラン系のランチ価格は低価格帯から高価格帯までの
3つで構成されています。
この場合、多くのお客さまは真ん中の価格帯で選択します。
ご存じの方も多いと思います。行動経済学でいう「極端の回避性」です。
難しい選択をせずに真ん中あたりを選び、危険を回避する作戦です。
先人の知恵でもあるお寿司屋さんの松、竹、梅の価格設定です。
居酒屋系のように700円~900円程度の価格帯と
1,000円台の二つの選択肢しかない場合は、
安いほうの価格を選ぶことが多くなります。
推定ですが、レストラン系の客単価が1,200円程度とすると
居酒屋系は950円程度になるのではないでしょうか。
昼に関しては20%以上売上額に差があるかもしれません。

5.居酒屋さんの夜のお客さまはランチを利用しているのか


居酒屋でランチを提供する理由はおそらく3つだと思います。
(1)夜の食材の効率的な利用
(2)昼の時間帯でも家賃分費用の回収
(3)昼を入り口にした夜の来店促進
特に(3)のランチ価格は多少リーズナブルにして、
できれば夜の来店に繋げたいと考えていると思います。
しかし……。

ある店舗で夜の来店客に昼のランチを利用したことがあるのかを調査しました。
(調査数107名、2017年12月アンケート)
結果、夜の来店客でランチの利用経験のあるお客さまは8%でした。
1店舗だけの調査なので不確かでわかりませんが、
思った以上に少ないと感じました。

コンビニ、持ち帰り弁当店、フードトラックなど
ランチの競合は増加し、激しい競争になっています。
しかも人手不足です。
ランチを夜の入り口戦略として低価格で提供するということの
メリットがあまり感じられないような気がします。

居酒屋のランチと夜の併用利用は多いのか
6.まとめ:「あのお店の1,500円のランチ」


「居酒屋だから昼はこのぐらいの価格でこんなメニュー」
というこで価格設定されていないでしょうか。
一般的に価格戦略として、
(1)需要志向:世の中ではだいたいこんな価格。
(2)競争志向:あそこのお店がこの価格なのだからこちらもこの価格で。
(3)コスト志向:仕入れにこれだけ掛かっているからこの価格で。
「居酒屋だから…」はつまり需要志向です。
しかし、これだけ競争が激しいと価格競争になりがちです。
レストランでは高い利益のお酒の販売にあまり期待できないため、
キッチリと食事で売上げを確保することにしていると思います。
コスト志向です。

お酒の販売を中心とする居酒屋などの業態の市場規模は
長期にわたって減少傾向です。
売上額の増加のためには、
「あのお店のあの1,500円のランチを食べたい」と
思ってもらうメニューを開発し提供してもよいのではないでしょうか。
さらに900円、1,000円~1,200円、1,500円の3つの価格帯の提案で
顧客単価をアップさせていくことを考えるべきだと思います。
お手頃ランチの提供よりも、お客さまが満足し、お店もきっちりと稼げる
コスト志向のランチの提供を考える時代になったと思います。

減少する居酒屋の売上高