丸の内国際ビルにある「鹿屋アスリート食堂」。マーケティング業界の先輩から紹介されました。
スポーツする人や健康意識の高い人のためのレストランです。

1.自社の強みは高度なスポーツ知識

 「鹿屋アスリート食堂」は(株)バルニバービ、国立大学の鹿屋体育大学、鹿児島県の鹿屋市の三者による産学官連携プロジェクトとのこと。
 鹿屋体育大学は国内唯一の国立体育系大学です。キャッチフレーズは「スポーツで未来を拓く自分を創る」。スポーツに関する高度な専門知識がありますね。

鹿屋体育大学
鹿屋体育大学Webサイトより

 売り物は「一汁一飯三主菜。美と健康のバランス定食」。三つの主菜を自分で選んで注文します。精算レシートにはカロリーやタンパク質など8項目の摂取量が1日分の目安とともにプリントされてきます。オリジナルブレンドのアス米をもぐもぐしながら「食物繊維これで7割だな」などと読み込んでしまいます。

鹿屋アスリート食堂

2.お客さまはスポーツに意識のある人

 サッカーワールドカップは盛りあがりましたね。スポーツをするだけでなくスポーツコンテンツなどにも関心が高まっています。
 しかし、スポーツ庁の「スポーツ新事業報告書」によると、スポーツビジネスは世界市場では成長していますが、日本では2002年と2012年を比較すると減少しています。

世界スポーツ市場規模推移

 レジャー白書2016によると上位10位までのスポーツ人口は累計で1億2千万人なっています。
しかし、多くの国民が余暇としてスポーツを行うものの消費市場としては成長しているとは言えません。
お父さんたちが好きなゴルフや釣りという大きなマーケットが低調であることも要因のようです。

 スポーツ庁ではスポーツツーリズムなどの「周辺産業」やIT化などの「IoT活用」までを含めたスポーツ市場規模の拡大を目指しているようです。したがって周辺産業のひとつとして「スポーツ×飲食店」は重要だと思います。想定するターゲット人口は十分にあり、ビジネスとしての機会も大きいようです。

3.直接競合する飲食店がない

 「鹿屋アスリート食堂」は神田錦町の本店をはじめ全国で6店舗あります。しかし、直接競合する同業飲食店はないと思います。「アスリートのための食堂」という新しいカテゴリーであり、「スポーツ栄養学に基づいた食事」というコンセプトも明確だからです。競合店舗がないことの良さは競争が不要になることです。

 ニッチビジネスのメリットは、リーダーやチャレンジャー、フォロワーにはできない
「高い利益率」の確保ができることです。(→F・コトラーの競争地位別戦略)
「ここでしか食べられない」ということであるならば価格競争についてあまり意識しなくてよいということです。飲食店である以上、現実的にはそんなに簡単ではないでしょうが、新しいカテゴリーであり、ニッチなビジネスであることは大きな優位だと思います。

スポーツ人口、スポーツ年間費用

4.まとめ:独自という魅力

 「アスリートのための食堂」という新しいカテゴリーに絞り切ったことが素晴らしいと思います。
丸の内国際ビル近辺は飲食店が多数ひしめき合うエリアですが、まさしく他店と一線を画しています。
体育大学が母体であることの強みをさらに発揮して大きく展開できる可能性があると思います。

 スタッフの方が週替わりでスポーツのユニフォームで接客する。店内に体操のつり輪を設置する。
10回来店すると鹿屋体育大学でコーチと一緒に走れる…。
…すいません、自分だけ面白くなってしまいました(笑)。

鹿屋アスリート食堂
丸の内店(左)神田錦町本店(右)
参考:「鹿屋体育大学スポーツ栄養学講師が教える なりたい体になれるアスリートめし」(長島未央子監修 日東書院刊)
※お買いものマーケティング企画室ブログより転載しました。