日頃はニッチな飲食店を一生懸命に探しているのに、たまにカレーの魅力に負けます。神楽坂のインドカレーのお店「想いの木」にランチに伺いました。かなりの人気店です。インド料理店には新しいカテゴリーが生まれつつあるようです。

1.<お店の強み>インドカレーでありながら和テイスト

 お店の入口から驚きます。木に手書きのかんばん、墨文字の詩が書かれたのれん。山深いお寺の庵のような「わびさび」の世界。お店は2階です。階段は意図的にだと思いますが、かなりの暗さ。なので、「異世界」に向かうワクワク感があります。店内の壁にもモダンな墨文字アートの作品が掛かっています。

 出てくる料理も「繊細、上品、丁寧」。スタッフの女性がひとつひとつの野菜の産地や由来を説明してくれます。ありがちなステンレスの皿とボールにカレー。というイメージとはかけ離れています。「これは新しいなぁ」と感銘。

思いの木、ニッチなインド料理店
ちょっとジミで和テイストな入り口

2.<お店の競合>厳しく磨かれる激戦区、神楽坂

 飲食店の質と店舗数という意味で神楽坂は都内でも屈指の激戦区。石だたみの辻々に、どんなお店だろうと思う魅力的な飲食店がたくさんあります。カレーでもインド、タイをはじめ、北海道生まれのスープカレー、中国出身の薬膳カレー、カンボジアのカレー、喫茶店のカレーにバーのカレーまで。

 特徴的なのはランチでも1,500円以上のものがあるなど神楽坂らしく高価格で設定しているお店が多いこと。この地区で評価を得ることができれば東京でも名店は間違いありません。

カレーにはさまざまな競合店がある
神楽坂のカレーの名店

3.<お店の顧客>お客さまはゆとりのある「女性」

 「ここ、ここよ」と指さしながらお店に入る女性が二人。店内は女性客が約6割です。夜は調査してないのでかわかりませんが、メインターゲットは女性のようですね。サブターゲットとしては女性に連れてこられるお財布がわりの男性でしょうか(^_^)。

 インド料理店の市場を見てみると、売上高も店舗数も増加。しかし、1店舗当たりの売上高では減少しています。街にインド料理店が増え、競争が激化。ありきたりでは、これからは難しいということでしょう。

インド料理市場規模、インド料理店の一店舗あたりの売上

4.<まとめ>和テイストのインド料理カテゴリーで名店に

 厳しいインド料理店の競争でカテゴリーの分化が進んでいます。インド風チャーハン「ビリヤニ」の人気が出てきて専門店もあります。「(ブログ「チャーハン巡礼記」)近所を少し歩いたら「タンドリーチキン」の専門店もありました。中華料理から飛び出した餃子やチャーハンの専門店のように
単品メニューでニッチな専門店になることはひとつの道です。しかし、これは他店もマネしやすく、やがてまた競争が激化します。

 マイケル・ポーターの言う「参入障壁」を高める必要があります。規模を大きくする、製品差別化(ブランディング)、経験、独自の技術などで「参入障壁」を築くことができれば、地位を確保できます。他のお店にできない独自でニッチなカテゴリーを確立できれば、厳しい競争をする必要がなくなり、収益が高まります。

 「想いの木」は、外観、内装、メニューなどで差別化(ブランディング)。和テイストのインド料理というニッチな新カテゴリーで専門化しています。他のお店では簡単にマネができません。これにより、お客さまが「一度行ってみたい」と思うお店になりました。神楽坂だけではなく東京のインド料理の名店だと思います。

マイケルポーターの参入障壁