The marketing for niche restaurants

愛好ニッチ飲食店の事例:残念!閉店「ガンダムカフェ」。キャラクターレストランの未来

 ここでは8つのカテゴリーのうち愛好ニッチ飲食店の事例についてレポートします。カテゴリーの区分けは別ページを参照してください。またこのカテゴリーの市場と顧客分析は予測概論を参照してください。

●人気キャラクターのレストラン。2022年1月、残念ながら閉店。

 東京・秋葉原の「ガンダムカフェ」。2022年1月、とても残念ですが閉店となりました。
    
正式な発表はありませんでしたが、コロナ禍でお客さまが激減したことは間違いありません。特に海外から「日本のガンダム」を目指してくる外国人のお客さまは皆無となったはずです。
   
災害とも思える状況なので「しかたない」とも言えます。しかし、これでなくなったのなら、本当に必要なレストランではなかったとも言えます。
    
ニッチな飲食店は「どうしてもなければならない」ものです。そにまで到達していなかったということかもしれません。
     
 キャラクタービジネスは巨大です。しかし、キャラクターレストランは熱烈なファンのためのサービスビジネスになってしまっています。ビジネスのあり方についてもっとよく考えると、確実なビジネスになるはずです。

●理由は「ガンダム」に浸りきってみたい

 ということで以下、閉店前の状況をレポートです。
  
 アニメの本拠地、秋葉原にありました。カフェといってもレストランエリア、ディナーエリア、ドリンクコーナーなどがあり、かなりの広さでした。予約制ですが、コロナ禍の2021年3月でもお客さまでほぼ満席に近い状態。「ガンダム」人気は確かなものだと感じました。
    
 メニューは「アムロ専用パイロットランチ」など。すべては「ガンダム」です。大きなスクリーン、キャストのコスチューム、インテリアもすべて「ガンダム」。食べることだけではなく「ガンダム」の世界に染まり、浸りきることの喜びが来店する目的だと思いました。
    
 コロナ禍がなければ、おそらく連日満員だったんだと思います。

残念ながら閉店したガンダムカフェ
●世界のキャラクターランキングでみる「ガンダム」の強さ

 英語版のWikipediaに世界のキャラクタービジネスの売上データが掲載されています。下図をご覧ください。
    
「ポケモン」はすごいですね。ダントツのナンバーワンです。「ハローキティー」も続いています。ディズニー関連のキャラクターもさすがです。上位に日本発のキャラクターが目白押しです。キャラクタービジネスが日本の重要産業なのがわかります。
   
 このなかで「ガンダム」は「バービー」、「トイストーリー」にはさまれた17位にいます。17位とはいえ、「ガンダム」のトータルの売上高は237億ドル。1ドル110円で換算すると約2兆7,000億円にもなります。スタートが1979年ですから、単純に計算すると年間600億円から700億円の売上額になります。
   
 バンダイナムコホールディングス(株)の2022年3月期の決算報告でも「機動戦士ガンダム」の売上高は1,000億円を越えています。巨大なビジネスです。
    
販売の中心はプラモデルやコレクターズフィギュアのようなグッズです。いまやおとなになった「ガンダム」ファンが大事なお客さまになっています。

キャラクタービジネスの世界売上高ランキング
●なぜ、あまり儲かりそうものないキャラクターレストランがあるのか

 キャラクターレストランは「ガンダム」だけではありません。大阪USJの「ハリーポッター」、「ポケモン」、「アンパンマン」など有名キャラクターのお店にはレストランがあります。ピーターラビットのような少しマイナーなキャラクターにもあります。しかし、キャラクターレストランが大人気、全国で100店舗展開というようなことはありません。
   
 キャラクターレストランはお客さまへのサービス的な事業になっています。大事なキャラクターのグッズを販売するためです。したがって、数字に出てくるような大きなビジネスにはなっていません。今後の大きな成長を期待されていないようです。
   
 数十億ドルにもなる大きなコンテンツビジネスのなかで、キャラクターレストランはビジネスとして認められていません。未成熟なニッチな飲食店です。

●キャラクターレストランをSWOTで考える

 かんたんにですが、SWOT分析で考えます。SWOT分析は自身の強み・弱み、環境としての機会・脅威の4つの面からビジネスを考えるものです。
  
 ①強みは、なんといっても強固なファン層です。「ガンダム」に関連した飲食では、「ザクとうふ」が2012年に相模屋食料から発売され大ヒット。地味な豆腐業界なので大変な話題になりました。ファンの潜在的な購買力の大きさを見せつけました。しっかりとしたファン層の存在はビジネスにとって魅力的です。
  
 ②弱みは、飲食につながるイメージがほぼないことです。未来社会やロボットアニメのキャラクターと飲食はなかなか結びつきません。ここは後述します。
  
 ③機会は、前述のようにキャラクタービジネスの市場の大きさです。ここに飲食ビジネスが食い込む余地は十分にあると思います。
  
 ④脅威は、人気の浮き沈み。みんなが「大好き」といったのに、あっという間に消えていってしまったものもたくさんありますね。ここのコントロールは難しいものと思います。
  
 ということで、キャラクターレストランの成長には、強固なファン層と市場の大きさをつかむこと。そのためには、弱み、つまりキャラクターと飲食のつながりの弱さを克服する必要があります。

●どうして暗黒の未来食なのか。キャラクターレストランの難題

 あらためてSF映画やアニメなどを見ると、飲食がいいイメージで出てくることがあまりありません。
  
「千と千尋の神隠し」では飲食店で両親が豚になってしまいましたね。「マトリックス」では、流動食のようなものを食べるシーンがシニカルに描かれていました。
   
 傑作SF映画「ブレードランナー」では、主人公が雨のふりしきるなか、小さな屋台で立ち食いのうどんを食べていました。オヤジさんの「ふたつで十分ですよ」という日本語が印象的でしたね。SFホラーの古典「エイリアン」でも、あろうことか食事中にエイリアンが身体から出てきてしまいました。
    
アニメでもSF未来映画でも食べることについて魅力的な世界観が表現されていません。なぜ暗黒の未来食なのでしょうか。

●飲食店ビジネス業界が未来のレストランのイメージを提供していない

 暗黒の未来であることがつくる側、クリエイターには、やりやすいのかもしれません。あるいは未来の飲食について、クリエイターたちが直観的に期待をしていないということも考えられます。
   
 ひょっとしたらクリエイターが制作に没頭し、おいしい食事に興味をもつことができない生活をしているのかもしれません。カップ麺を片手にパソコンに向かうシーンがすぐに浮かんできます。「クリエイターのための食事改革」が未来のキャラクターレストランをつくる方法かもしれません。
   
 暗黒になってしまうもっと大きな要因と思えるのは、飲食店ビジネス業界が未来のレストランのイメージを提示できていないからではないかと思います。アニメや映画界のクリエイターたちの創造力をかきたてるような未来的な姿を見たことがありません。これが必要だと思います。

 ということで、予測のページも参照ください。

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