ここでは地域ニッチ飲食店の事例についてレポートします。カテゴリーの区分け、市場と顧客分析は別ページを参照してください。
●神楽坂のカンボジア料理店。飲食店のニッチ・マーケティングの成功。
神楽坂のメイン通りの坂道から見番横丁に入り、かなり引っ込んだところにあるカンボジア料理「バイヨン」。当室でサポートしています。なので我田引水、自画自賛、手前味噌のお手盛りレポートです。
しかし実績として2024年は2019年比で約150%の売上になりました。さらに2025年も成長中。詳しくは別ページでレポートしています。

●SWOT分析。強みは本格レストラン出身のシェフ。
カンボジア料理店は珍しく全国でも10店ほど、都内では3店しかありません。
しかしタイやベトナムのようによく知られた国の印象がないせいか、はたまた近ごろの特殊詐欺拠点のニュースのせいかカンボジア料理店はあまり人気がありません。生まれては消える泡沫(うたかた)のようにできては消えていく店が多いようです。
ところがこの店はちょっと違います。ざっとSWOT分析してみます。長い間サポートさせていただいているので分析は間違いないと思います。
S:強み。シェフの実力。オーナーシェフはプノンペンの有名レストランでシェフを務め、また料理学校でも講師をしていた実績もあります。
W:弱み。 言葉の問題。シェフの日本語は日常会話では問題がありません。しかし私にも難解な役所の日本語書類などは当然、苦戦です。
O:機会。美食観光地と市場成長。神楽坂は美食の町。和食、フレンチ、イタリアンの名店がたくさんあり、観光客がおいしい店を目当てにやってきます。
またタイ、ベトナムなどの東南アジア料理は1980年代にエスニック料理として人気になり、その後も市場として成長しています。
T:脅威。認知がない。「カンボジア料理ってどんなもの?」。SNSなどで多発するコメントです。

●ここまでの成功施策。本格レストラン出身のオーナーシェフを中心に。
2019年から正式に支援開始。コロナ禍あけの2022年後半から急速に売上が向上してきました。コロナ禍の間に行った施策がボディブローのように効いてきた感じがしています。
(1)ストーリー・マーケティング。注目されるシェフ。
シェフはプノンペンの有名レストラン出身。料理を学ぶ学生たちのトレーナーもしていた腕前です。すでに来日15年。日本になじむためには苦労もありました。ニッチなカンボジア料理店はお客さまに来ていただくのも大変…。そいきさつをホームページなどにも掲載しました。
ここから珍しいカンボジア料理店、カンボジア出身の本格的なシェフということで注目され、雑誌・新聞・ラジオ・Webメディア・テレビなどの取材がたくさんありました。
(2)新メニュー。カンボジアらしさの強化。
現地のカンボジア情報をもとに、カンボジア産のジンなどの新メニューも導入しています。またカンボジア特産の胡椒、民族ファッションのクロマーなどの販売もしています。
料理、ドリンク、商品販売でお客さまが望む「カンボジアらしさ」を叶えようとしています。近ごろのマーケティングでは「体験価値」ともいいますね。
(3)コンテンツ・マーケティング。カンボジアの食文化情報。
「カンボジア料理ってどんなもの?」。お客さまの頭に浮かぶたくさんの疑問に料理だけでなく情報でも応えています。
メニューブックなどの店のツール、ホームページ、SNSなどでカンボジアの料理はもちろん食材・調味料、文化・現地の事情までもレポートしています。
これらによってネットで「カンボジア」や「カンボジア料理」に興味のある人たちにコンテンツをヒットさせて来店に誘導しています。

●まとめ。成長には時間と手間。つまり「ニッチ構築」。
ニッチの基本は「すき間」ではなく独自地位の獲得です。そのためにはニッチを自らつくりあげる必要があります。生態学で言う「ニッチ構築」です。
たとえば北米に棲むビーバーです。木をかじりとってきて川をせき止めるダムをつくります。できた池のまん中に木をつみあげて水中が入り口の巣をつくります。このためにビーバーは木を切る硬い歯や泳ぎのためのしっぽを発達させました。
ニッチの構築にはビーバーの巣づくりのようにコツコツたくさんの作業が必要です。SNSにおもしろそうな写真をアップしたらお客さまがドカンと増えて売上が急上昇なんていうことはありません。「これで一発逆転」は夢の話です。
ひとつひとつの小さな施策をコツコツと、地道、地道、地道に積み上げてきました。「地道」を三回言いました。それで2019年比150%アップまできたと思っています。
時間と手間、創意と工夫。大変ですが成長を期待してがんばりましょう。ここでドリカムの歌「何度でも」を大きな声で歌いましょう。

